[コラム] 【実務完全解説】FIT/FIP制度の「説明会等」要件と落とし穴〜改正再エネ特措法の現場対応〜

✅ ざっくり言うと

🌍 2024年4月1日施行の改正再エネ特措法により、FIT/FIP認定手続において「説明会」または「事前周知措置」が認定要件として義務化されました。説明会の要件を定めた説明会及び事前周知措置実施ガイドライン2025年4月にも改訂されており、常に最新版の確認が必要です。
⚠️ 説明会は原則として認定申請の3ヶ月前までに実施する必要があり、スケジュール管理を誤ると当該年度の売電単価を逃す致命的なリスクがあります。
📝 「周辺地域の住民」の範囲は低圧電源(50kW未満)で100m以内、高圧・特別高圧電源(50kW以上)で300m以内という電源種別の基準があり、さらに土砂災害警戒区域等や認定申請要件許認可の対象エリアへの設置では低圧でも説明会が必要となるなど、要否判定は複雑です。市町村への「事前相談」が絶対的な前提となっており、自治体との初期交渉がプロジェクトの成否を分けると考えられます。
🤝 新規開発だけでなく、M&Aやリパワリングによる「変更認定申請」でも説明会が必須となるケースが多く、デューデリジェンス(DD:Due Diligence)の重要項目となっています。

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目次

はじめに

今回は、FIT(固定価格買取制度:Feed-in Tariff)およびFIP(フィードインプレミアム制度:Feed-in Premium)制度における「説明会等」の実施要件について、実務的な観点から詳細に説明していきます。

ご存知の方も多いと思われますが、2024年4月1日より改正再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)が施行され、経済産業省・資源エネルギー庁が定める説明会及び事前周知措置実施ガイドラインに基づく地域住民への説明が、FIT/FIP認定の要件として組み込まれました。
さらに、同ガイドラインは2025年4月にも改訂されており、特に「周辺地域の住民がいない場合」の説明会省略要件の明確化や、参加者不在時の待機期間の取扱いが整理されています。最新の実務対応においては、必ず現行版のガイドラインをご参照ください。

ASEAN地域など新興国でのメガソーラーや水力発電開発において、地域コミュニティの同意(FPIC等)が国際金融公社(IFC:International Finance Corporation)のパフォーマンス・スタンダードで厳格に求められるのは常識ですが、日本国内の再エネ法制もついにその水準に追いついてきたと評価できると考えています。

本記事では、「とりあえず開催すればよい」という表面的な理解を脱し、事業ストップや認定取消しのリスクを排除するための実務対応を解説いたします。

説明会等の実施の要否判定(制度の網羅的理解)

実務において最初につまずくのが、「自社のプロジェクトは説明会(対面・オンライン等での双方向コミュニケーション)が必要なのか、それとも事前周知措置(ポスティング等の単方向の周知)で足りるのか」という要否判定です。

まず対象外となる事業

最初に確認すべきは、説明会等の実施が「そもそも不要」な事業です。
ガイドライン第2章第1節に基づき、以下の事業は説明会・事前周知措置のいずれも実施義務の対象外となります。

(i)出力10kW未満の太陽光発電事業(住宅用太陽光発電事業)。
(ii)屋根設置太陽光発電事業(全ての電源種・全ての出力規模)。
(iii)再エネ海域利用法の適用事業。

ここで一点、誤解が非常に多い重要事項があります。
屋根設置型の太陽光発電設備は、出力規模に関わらず対象外です。
「屋根置きの大型太陽光は事前周知措置が必要なのでは」という思い込みをお持ちの方も少なくないと思われますが、ガイドラインは明示的に対象外と規定しています。
ただし、屋根設置太陽光発電事業であっても、事業の影響と予防措置等について説明会等の実施に努めることが求められている点には留意が必要です(努力義務)。

「説明会」が必須となる要件

上記の対象外を除く事業のうち、以下のいずれかに該当する事業は「説明会」の開催が義務付けられます。
なお、これらの要件はガイドライン第2章第1節2.および資源エネルギー庁の改正関連情報ページに基づくものです。

① 認定申請要件許認可の対象エリアに設置する事業

「認定申請要件許認可」とは、施行規則第4条の2第2項第7号の2イ〜ホに定める許認可であり、具体的には以下の法律に基づく許可の取得対象エリアに再エネ発電設備を設置する場合を指します。

  • 森林法第10条の2第1項に規定する林地開発許可の取得対象となっている地域森林計画対象民有林
  • 宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)に基づく宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域
  • 砂防法に基づく砂防指定地
  • 地すべり等防止法に基づく地すべり防止区域・ぼた山崩壊防止区域
  • 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律に基づく急傾斜地崩壊危険区域

② 土砂災害警戒区域(土砂災害特別警戒区域を含む)又は土石流危険渓流に設置する事業

①とは別カテゴリとして独立した要件です。出力規模に関わらず(10kW未満の住宅用太陽光・屋根設置型を除く)、これらの区域への設置では説明会が必要です。

③ 条例において、自然環境・景観の保護を目的として保護エリアを定めている場合に、当該エリアに設置する事業

④ 上記①〜③のいずれにも該当しない高圧電源(出力50kW以上2,000kW未満)又は特別高圧電源(出力2,000kW以上)

太陽光発電については地上設置型に限ります。

⑤ 低圧電源(50kW未満)であっても、事業の実施場所の敷地境界線からの水平距離が100m以内に、同一の事業者等が実施する再エネ発電事業が存在し、それらの出力合計が50kW以上となる場合

【実務上の重要ポイント】 「⑤」の規定は、過去に横行した「高圧逃れの低圧分割案件」に対する規制の延長線上にあります。「同一の事業者等」には、事業者の密接関係者も含まれるとガイドラインの解説で明記されています。したがって、実質的な支配関係にあるSPC(特別目的会社:Special Purpose Company)や、親会社が同じ別法人を用いた隣接エリアでの期分け開発であっても、低圧並みの軽い手続では済まない点に注意が必要です。

「事前周知措置」で足りる要件

上記1-2の①〜⑤のいずれにも該当しない事業(すなわち、対象エリア外・災害リスク区域外・条例保護エリア外の低圧電源で、分割案件にも当たらないもの)は、説明会の開催までは求められず、ポスティング等による「事前周知措置」の実施で足ります。

認定変更申請(M&A・計画変更)の罠

既にFIT/FIP認定を取得して稼働中、あるいは開発中の案件であっても、ガイドライン第5章に基づき、事業計画の「重要な変更」(認定事業者やその密接関係者の変更、設置場所の変更、出力・パネル容量の20%以上または50kW以上の増加など)を行う場合は、説明会等の手続が求められます。
開催時期について「変更認定申請の3ヶ月前までに説明会等が必要」という点は新規申請時と同じですが、説明すべき事項の範囲は過去の説明会実施状況によって以下の通り異なります。
過去に再エネ特措法の要件を満たす説明会等を行っていない場合には、新規申請時と同様に、ガイドラインで定められた全ての説明項目を説明する必要があります。
既に同要件を満たす説明会等を実施している場合には、過去に説明・周知された内容から「変更があった事項」のみを説明・周知すれば足ります。
(※なお、事業譲渡等による認定事業者の変更を伴う説明会を実施する場合は、原則として旧認定事業者と新認定事業者の双方が同席する必要があります。)

具体的には以下の変更が該当します(施行規則第8条の2各号)。

① 事業譲渡、合併又は会社分割等を原因とする認定事業者の変更

なお、相続等は含まれません。

② 認定事業者の密接関係者の変更

「密接関係者」とは、ガイドライン第5章の解説において、
(i)持分会社の場合は社員
(ii)株式会社の場合は議決権の過半数を保有する株主
(iii)匿名組合出資の場合はその過半数の出資持分を保有する者
(iv)上記(i)〜(iii)の親会社
と定義されています。

③ 再エネ発電設備の設置場所の変更

④ 認定出力を20%以上又は50kW以上増加させる場合

なお、この判定は単体の変更だけでなく、新規認定の日又は直近で行った説明会等の日のうちいずれか遅い日から起算した累計値でも行われます(施行規則第8条の2第4号)。
小規模な増設を段階的に繰り返しても義務は回避できません。

⑤ 太陽光発電設備の場合はパネル合計出力についても同様の基準が適用されます(施行規則第8条の2第5号)。認定出力とは別に、パネル容量の20%以上又は50kW以上の増加も対象です。

この規定は、セカンダリー市場(稼働済み発電所の売買市場)におけるM&A実務に多大な影響を与えています。
株式譲渡でSPCごと買収し、親会社(密接関係者)が変わるだけでも説明会等の実施対象となります。
さらに、認定事業者の変更に伴う説明会には、原則として旧認定事業者と新認定事業者の双方が出席することがガイドラインで求められています。
M&Aのクロージング条件(CP:Conditions Precedent)に「説明会の完了と変更認定の取得」をどう組み込むか、売主・買主間のリスク分担をどう規定するかが、我々弁護士の契約書ドラフティングにおける腕の見せ所になっていると言えます。

説明会開催の「タイムライン」と「自治体協議」のリアル

ここからは、実際に「説明会」を開催する場合の手続要件を説明していきます。
スケジュール要件を1日でも徒過すると、認定手続が数ヶ月単位で遅延する恐れがあるため、厳格なプロジェクトマネジメントが必要です。

スケジュールの全体像

説明会の開催タイミングには、明確なデッドラインが設定されています。

原則として、FIT/FIP認定申請を行う日の3ヶ月前までに説明会を「完了」させなければなりません(ガイドライン第3章第2節①、施行規則第4条の2の3第2項第7号ホ)。
なぜ3ヶ月という長期のインターバルが設けられているかというと、説明会で住民から出た懸念事項や反対意見に対し、事業者が真摯に対応し、必要に応じて事業計画を見直すための「熟慮期間」として位置付けられているからです。

ただし、認定申請要件許認可が必要な事業の場合は、
(i)許認可の申請までの時期、と、
(ii)許認可取得後から認定申請日の3ヶ月前までの時期
2段階で説明会を開催する必要があります(施行規則第4条の2の3第2項第7号イ)。
環境アセスメント対象事業や条例に基づく許認可が必要な事業にも、それぞれ固有のタイミング要件が設定されていますので、ガイドライン第3章第2節を精読されることをお勧めします。

さらに、説明会の開催を知らせる「開催案内」は、説明会開催予定日の2週間前までに周辺住民に周知するとともに、資源エネルギー庁のシステムを通じて国に提出する必要があります(施行規則第4条の2の3第2項第2号)。

つまり、「申請予定日」から起算して、最低でも3ヶ月半前には住民の自宅のポストに案内状が投函されていなければなりません。
会場手配や資料作成、後述する自治体協議の期間を考慮すると、事業開始の半年前には実務をスタートさせないと間に合わないと考えられます。

例外規定:参加者が「ゼロ」だった場合および説明会省略が認められる場合

ここで、実務家として知っておくべき重要な例外規定があります。

(1)参加者ゼロの場合の待機期間免除

ガイドライン第3章第2節の解説によれば、説明会を開催したものの、周辺地域の住民が「誰一人として出席しなかった」場合については、前述の「3ヶ月前まで」を「認定申請日」と読み替えることができます。すなわち、3ヶ月の待機期間を経ることなく認定申請を行うことが可能です。

(2)説明会の開催自体の省略(2025年4月改訂で追加)

ガイドライン第3章第1節の解説に基づき、距離基準内に居住する者が存在しないことを確認し、かつ市町村への事前相談の結果「周辺地域の住民」に追加すべき者はいないとの意見を得た場合において、システムを活用した開催案内を行い、説明会の開催予定日の前々日までに土地/建物所有者から出席を希望する旨の連絡がなかったときは、「周辺地域の住民」がいないことが客観的に確認されるため、説明会の開催自体が不要となります。
これは2025年4月改訂で明確化された重要な規定です。

ただし、上記(1)の例外規定の適用を狙って、わざと住民が参加しにくい日時に設定したり、案内状を不適切に配布したりした事実が発覚した場合、ガイドラインは「周辺地域の住民」の参加を拒んだり断念させたりする行為を「誠実な対応」に反するものとして明記しており、認定を行わず又は認定を取り消すなどの厳格な対応がなされます。

「周辺地域の住民」の範囲と自治体への事前相談

案内状を配布し、説明会に呼ぶべき「周辺地域の住民」はどこまでを含めるのか。
ガイドライン第3章第1節では、再エネ発電事業の実施場所(敷地境界線)からの水平距離に基づき、以下の距離基準を定めています。

  • 低圧電源(出力50kW未満)の場合:100m以内
  • 高圧電源(出力50kW以上2,000kW未満)又は特別高圧電源(出力2,000kW以上)の場合:300m以内(ただし、次の場合を除く)
  • 環境影響評価法に基づく環境アセスメント対象事業(第一種事業に限る)の場合:1km以内
  • これらに加え、実施場所に隣接する土地又はその上にある建物の所有者(以下「土地/建物所有者」)
  • さらに、市区町村長が事前相談に基づき「周辺地域の住民」に加えるべきとした者

事業者は、必ず事業の実施場所が属する市町村に対して、ガイドライン付録1の指定様式を用いて事前相談を行わなければなりません。
事業概要、想定する住民の範囲図、配布予定の資料を添えて自治体に持ち込みます。

自治体からは、「この事業地は土砂災害警戒区域に近いから、下流側の〇〇自治会全体まで範囲を広げてほしい」「通学路に工事車両が通るから、〇〇町内の住民にも周知してほしい」といった地域固有の事情に基づく要望が出されるケースが多く見られます。
この自治体の意向を無視して強行することは、事実上不可能です。
自治体からの回答(付録2様式)を得るまでに数週間を要することも多いため、ここがクリティカルパス(工程上のボトルネック)になりやすいと考えられます。

説明会当日の進行と説明項目

説明会当日について説明していきます。

ガイドライン第3章第5節に基づき、認定申請を行う事業者自身が出席し、説明項目及び説明事項について説明することが義務付けられています(施行規則第4条の2の3第2項第3号)。
事業者が法人の場合は、法人の役員又は従業員のうち十分かつ適切な説明をすることができる者が出席し説明することとされています。再エネ発電事業を委託事業者に委託する場合でも、説明の責任主体は事業者自身であり、委託先への丸投げは認められません。

ガイドライン第3章第4節が定める説明項目は、大きく「再エネ発電事業計画の概要等」と「事業の影響と予防措置」の2つのカテゴリに分かれています。

【カテゴリ1】再エネ発電事業計画の概要等

① 再エネ発電事業計画の概要

認定申請を行おうとする事業者、電源種、設置形態、出力、実施場所、災害時の活用可能性(パワーコンディショナーの自立運転機能の有無及び給電用コンセントの有無)を説明します。

② 関係法令遵守状況

再エネ発電事業の実施のために必要な認定申請要件許認可、「関係法令手続状況報告書」記載の法令に基づく許認可・届出等、条例に基づく許認可・届出等について、手続の要否、許可等の取得状況、取得手続のスケジュール及び法令を遵守するための実施体制を説明します。

③ 土地権原取得状況

再エネ発電設備の設置場所に係る所有権その他の使用の権原の取得有無、未取得の場合はその取得状況を説明します。

④ 設置工事の概要

着工予定の時期及び運転開始予定の時期を含めて、予定する工事のスケジュールについて説明します。

⑤ 関係者情報

事業者が法人の場合は、その代表者及び役員の氏名・概要、主な出資者、予定している保守点検責任者について説明します。

【カテゴリ2】事業の影響と予防措置

① 安全面の影響及び予防措置

太陽光発電設備の開発許可等の基準や運用の考え方について」(令和5年5月25日関係省庁申合せ)における整理に準拠する形で説明します。
斜面への設置、盛土・切土、地盤強度、排水対策、法面保護・斜面崩落防止策、防災施設の先行設置、設備設計、施工後の管理の継続性、事業終了後の措置の各項目について具体的に説明することが求められます。

② 景観面の影響及び予防措置

条例で設定された保護エリアに該当する場合は、景観面への影響及び予防措置について説明します。

③ 自然環境・生活環境面の影響及び予防措置

電源種に応じて、騒音・振動、水の汚れ/濁り(全電源共通)、反射光、雑草の繁茂(太陽光)、風車の影による日照阻害(風力)、温泉への影響、蒸気の噴出(地熱)、流量等への影響(中小水力)、燃料保管等に伴う生活環境への影響(バイオマス)、大気環境・水環境への影響、生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全(環境アセス対象のみ)について説明します。

④ 廃棄物の撤去等に関する影響及び予防措置

廃棄費用の総額・算定方法、積立開始時期・終了時期、毎月の積立単価、太陽光パネルの含有物質情報、産業廃棄物の排出見込量、廃掃法等への遵守体制、土地開発許可等に基づく原状回復義務の内容等を説明します。

変更認定申請(M&A等)の場合の追加説明

上記の説明項目に加え、過去に再エネ特措法に基づく説明会等を実施しているかどうかに応じて説明範囲が異なります。
過去に実施していない場合は全項目を、過去に実施している場合は変更があった事項に係る項目を説明します。
さらに、認定事業者の変更の場合は、自治体等との間で締結した協定等の承継その他の円滑かつ確実な事業継続に関する事項についても説明又は周知する必要があります。

会場での質疑応答と議事録の重要性

質疑応答では、時に厳しい意見が飛び交うこともあります。
しかし、弁護士の視点から申し上げますと、ここで反対意見を封殺したり、曖昧な回答で逃げたりすることは最悪の悪手です。
ガイドラインは質疑時間における「誠実な対応」の要素として、事実に基づき正確に説明すること、客観的かつ具体的に回答すること、回答の理由や背景についても言及すること等を明記しています。
これに違反した場合は、認定を行わず又は認定を取り消すなどの厳格な対応がなされます。

さらに、ガイドラインは説明会の録音(音声の記録)及び録画(映像の記録)を義務付けています(施行規則第4条の2の3第2項第5号)。
出席者のプライバシー保護のため、出席者の背面から説明者が映る角度で録画することとされ、事業者以外が録音・録画を行うことは認められていません。
この録音・録画は、調達期間又は交付期間が終了するまでの間、適切に保管し続ける必要があります。

説明会終了後、事業者は認定申請に当たり以下の資料を国に提出する必要があります。

  • 「周辺地域の住民」の範囲に係る資料(地図等、事前相談書面、自治体意見書面)
  • 開催案内に係る資料(配布書面、開催案内を実施した範囲が分かる書面)
  • 説明会において配布した資料
  • 説明会の出席者名簿
  • 議事録(説明会開始時から質疑時間を含む議事の全てが終了するまでの内容)
  • 質問募集フォームにおける質問等及び「周辺地域の住民」に示した回答
  • 説明会概要報告書(付録4の様式による)

なお、説明会の開催後に2週間以上の期間にわたり質問募集フォームを設置し、説明会に出席した住民からの質問等を受け付けた上で、書面をもって誠実に回答することも義務付けられています。

事前周知措置(ポスティング)の手続と落とし穴

50kW未満の低圧案件などで「事前周知措置」で足りる場合も、決して油断は禁物です。

周知の実施方法と証拠保全

事前周知措置は、ガイドライン第4章に基づき、実施場所の敷地境界線からの水平距離が100mの範囲内の居住者に対して、第3章第4節で解説した説明項目及び説明事項の全てを周知する必要があります。
認定申請の3ヶ月前までに完了させなければなりません。

周知の方法としては、以下のいずれかによります(施行規則第4条の2の3第3項第1号、第2号、第4項)。

(i)ポスティングによる書面配布
(ii)戸別訪問による書面配布
(iii)インターネット上で「周辺地域の住民」の閲覧に供するとともに、主たるホームページのアドレスを回覧板に掲載する方法
(iv)インターネット上で「周辺地域の住民」の閲覧に供するとともに、主たるホームページのアドレスを関係自治体の公報又は広報誌へ掲載する方法

インターネットのみでの実施は認められていません。
(iii)(iv)いずれの場合も、住民に情報を認知するきっかけとなる別の方法(回覧板又は自治体公報/広報誌)との組み合わせが必須です。

実務上よく発生する問題が「空き家」や「ポストがない家」への対応、あるいは「配った・配られていない」の水掛け論です。
これを防ぐため、配布担当者は住宅地図に配布日時を細かく記録し、現場の記録を残すなどの証拠保全(トラッキング)を徹底すべきと考えられます。

事前周知措置の実施後にも、説明会と同様に2週間以上の期間にわたり質問募集フォームを設置し、住民からの質問等を受け付けて書面で誠実に回答する義務があります。

周知後に「説明会を開いてほしい」と要望された場合

ポスティング後、書面を見た住民から「不安だから直接説明会を開いてほしい」と連絡が来るケースがあります。
ガイドライン第2章第2節の留意事項において、説明会等の実施義務の対象外の場合であっても、「周辺地域の住民等のニーズを踏まえ、必要に応じて、説明会の開催等を通じて、地域の住民と適切にコミュニケーションを図るよう努めること」とされています。

法的性質としては「努力義務」に近い表現ですが、実務上、これを無視して申請を強行すると、住民が自治体に苦情を入れ、結果的に自治体との関係が悪化して事業が行き詰まるケースが散見されます。
お問い合わせに対しては、まずは個別訪問で真摯に説明を行い、複数名から強い要望がある場合は、規模を問わず自主的な説明会を開催することが、最も確実なリスクヘッジになると考えています。

まとめ – コンプライアンスから「地域共生型事業」へのパラダイムシフト

ここまで、非常に細かく厳しいルールの数々を解説してきました。
多くの事業者様にとって、この制度改正は「コストと手間の増大」に映るかもしれません。
しかし、法的な視点から見れば、これは日本の再エネ業界が健全に成熟するための避けて通れないプロセスです。

地域住民との対話を省き、強引に開発を進めた結果、工事差し止めの仮処分申し立てを受けたり、地域からの孤立によりO&M業務に支障をきたしたりする事例を、これまでに私は見てきました。

説明会等の手続は、単なる「行政に提出する書類を作るための消化試合」ではありません。
事業の潜在的なリスクを初期段階で洗い出し、地域社会という重要なステークホルダーと長期的な信頼関係を構築するための「戦略的対話の場」として機能するものと思われます。

特に、2025年4月のガイドライン改訂により、「周辺地域の住民」がいないことが客観的に確認された場合の説明会省略手続が整備された一方で、録音・録画の義務化や質問募集フォームの設置義務など、説明会の質を担保する仕組みも強化されています。
ご自身のプロジェクトが影響を受けるかどうか、今一度最新のガイドラインでご確認されることをお勧めします。

スケジュール管理、自治体との折衝、住民の不安に寄り添う資料作りなど、実務の難易度は確実に上がっています。
自社のみでの対応が難しい、あるいはM&A等で判断が複雑なケースにおいては、初期段階から再エネ・環境法務に精通した専門家にご相談されることをお勧めいたします。

本記事が、皆様の適法かつ持続可能な再生可能エネルギー事業の推進において、頼れる羅針盤となれば幸いです。

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