[コラム] 2025年度の再エネ特措法に基づく処分実績 強化される監視体制と実務上の留意点

✅ ざっくり言うと

  • 📢 2025年度の再エネ特措法に基づく処分実績は、FIT/FIP交付金の一時停止措置が計57件、FIT/FIP認定の取消しが計55件にのぼっています。
  • ⚠️ 認定取消しのうち5件において、制度開始以来初となるFIT/FIP交付金の返還命令が実施され、実効性の高い行政的ペナルティが科されています。
  • ⚖️ 森林法や農地法などの関係法令違反に加え、文書偽造や非バイオマス燃料の不適切な使用などに対する厳格な処分が行われています。

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目次

はじめに

今回は、2025年度における再エネ特措法(再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法)に基づく処分実績について説明していきます。

地域共生を重視する法改正の施行に伴い、行政による監視と処分はかつてないほど厳格化しています。
近年、国際的な枠組みでもESGに関する法規制や透明性の向上が求められていますが、日本の運用も同様に厳格さを増しています。
再エネ事業を適正に継続していくためには、どのようなケースが処分の対象となるのか、最新の実績から学ぶことが不可欠です。
「法令遵守を徹底しているつもりだが、実務上の落とし穴がないか不安だ」という方も多いと思われます。
本記事では専門的な視点から最新の処分事例を分析し、事業者がとるべき対応を整理します。

2025年度の処分実績の概況

資源エネルギー庁が2026年4月6日に公表したニュースリリースによると、2025年4月から2026年3月までの間に、不適切な再エネ発電事業に対して非常に強い姿勢での処分が行われました。
具体的には、FIT/FIP交付金の一時停止措置が計57件、FIT/FIP認定の取消しが計55件実施されています。

ここで特に留意すべきは、認定取消しを受けた事案のうち5件について、再エネ特措法に基づくFIT/FIP交付金の返還命令が実施された点です。
同命令の実施は今年度が初めてのケースとなります。
これは従来の行政指導を中心とした運用から、経済的な痛手を伴う実効性の高い法的執行への明確な転換を意味していると考えられます。

交付金一時停止措置の具体的内訳と傾向

交付金の一時停止措置を受けた計57件の内訳は以下のとおりです。

  • 経済産業省が実施する現地調査(いわゆる「再エネGメン」)等により発覚した不適切案件のうち改善がなされない案件(柵又は塀の設置や標識の掲示の不備、認定計画上の設置場所以外の場所に設置するもの等)が13件です。
  • 森林法違反が10件です。
  • 電気事業法違反が1件です。
  • 農地法違反が4件です。
  • 再エネ特措法の定期報告未履行(再三の督促にもかかわらず定期報告を全く履行しない等の特に悪質性が認められる案件)が29件です。

上記森林法違反の10件には、2025年5月19日に公表された、森林法に基づく許可を取得せずに開発を行っている、または林地開発許可に付された許可条件に違反して土地開発を行っている太陽光発電事業9件が含まれています。

特に事務的な「定期報告の未履行」が全体の半数近くを占めている点は、実務上極めて重要です。
物理的な設備の不備だけでなく、手続き上の不作為もまた、事業継続における致命的な法的リスクとなることを明確に示唆していると思われます。

認定取消し処分を受けた具体的な事案の分析

資源エネルギー庁が公表した資料に基づき、認定取消しとなった顕著な違反事例を分析します。

非バイオマス燃料の使用

D-POWER株式会社(D-POWER 津発電所)、株式会社JPX総研(茨城県常総市バイオマス発電所)、大阪製鋲株式会社(瑞浪市水上バイオマス発電所)、ベナート株式会社(兵庫グリーンバイオマスファーム)の4社については、非バイオマス燃料の使用を理由に認定取消しとなりました。
これらの事案には、再エネ特措法第15条の11第1項に基づく納付命令が実施されています。
この納付命令はプロジェクトのキャッシュフローに甚大な影響を及ぼすものであり、事業リスクモデルの見直しを迫るものと言えます。

文書偽造と分割案件の仮装

株式会社クスリのアオキ(複数店舗)は、文書を偽造し提出したことにより認定が取り消されています。
また、株式会社アイピーアール(田島南第1発電所)の事案では、公文書を偽造して提出し、分割案件に該当しないことを装ったものとして厳しい処分を受けています。

設置場所や送電線路の不正

合同会社Blue Power猪苗代では、認定計画上の送電線路を敷設せず、実質的に移設規制を潜脱したと判断されました。
また、ビーシーエスエナジー株式会社(秋田八峰沼田の複数案件)や株式会社サクシード(田島811発電所)などでは、認定計画上の設置場所以外に発電設備を設置したことが原因で認定取消しを受けています。

これらの事例から、国から認定を受けた計画内容を厳格に遵守することが、事業運営の絶対条件であることが改めて確認されたと考えられます。

関係法令遵守の重要性と今後の実務対応

2024年4月に施行された改正再エネ特措法では、地域共生の観点から、関係法令の違反事業者等に対し、早期の違反解消を促すため、FIT/FIP交付金を一時停止する措置が新設されました。

実例として、昨年(2024年)4月2日に森林法違反を理由に当該措置を講じた9件のうち、4件については違反状態が解消されたことが確認できたため、措置が解除されています。
一方、違反状態が継続している5件については、違反状態の改善に向けた取組状況等を確認するため、再エネ特措法に基づく報告徴収を実施することとされました。
これは違反の発覚後、いかに迅速に是正措置を講じるかが事業を維持できるかどうかの分かれ目になることを示しています。

行政は引き続き、関係法令違反等が確認された事業者等に対し、関係省庁および自治体と連携し、FIT/FIP交付金の一時停止措置等により厳格に対応していく方針を明言しています。

まとめ

2025年度の処分実績を振り返ると、行政の監視網は現地調査(再エネGメン)や他法令との連携によって非常に密になっています。
特に返還命令という金銭的制裁が実効性を伴って運用され始めたことは、不適切な事業運営に対する強力な抑止力です。

私自身は、FIT制度でのメリットを享受する以上は法令遵守は当たり前であり、遵守できないのであればFIT取消しはやむを得ないと考えています。
弁護士という立場から多くの再エネプロジェクトに携わっておりますが、認定計画の厳格な遵守と定期報告の徹底こそが、最大の法的防御であると確信しています。再エネ事業者の皆様においては、今後も透明性の高い事業運営を構築していく必要があると思われます。

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