[コラム] 2026年改正電気事業法の全貌と脱炭素新制度が企業実務に与える影響

✅ ざっくり言うと

  • 💡 2026年7月17日に成立した改正電気事業法により、大規模電源・送電網への公的資金を活用した融資や、太陽電池発電設備の安全規制強化が法定化されました。
  • 🏢 省エネ法改正に伴い、一定規模以上の事業者に対して、屋根設置太陽光発電設備に関する目標記載や設置余地の報告が段階的に求められます。
  • 🌍 GX-ETS(排出量取引制度)が2026年度から本格稼働し、対象企業は自社の炭素排出コストと直接向き合うことになります。
  • ⚖️ 弁護士の視点から、再エネ導入とリスクヘッジを両立するための実務的な対応策を解説します。
目次

はじめに

今回は、2026年の電力システム大変革と、改正電気事業法および脱炭素の新制度について説明していきます。

2026年は、日本のエネルギー政策や電力システムにおいて、歴史的な転換点となる年になると考えられます。
2026年7月17日には、参議院本会議において「電気事業法の一部を改正する法律案」が可決・成立しました(経済産業省)。
さらに、2026年度からは省エネ法(エネルギーの使用の合理化等に関する法律)の改正に基づく新たな対応や、GX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働も控えています(経済産業省)。日々の業務のなかで、これらの制度変更が自社の経営や実務にどのような影響を及ぼすのか、不安を感じているという方も多いのではと思われます。

私は普段、弁護士として再エネ分野のリーガルサポートを提供していますが、企業からのご相談を通じて、脱炭素に向けた動きが加速していることを日々肌で感じています。

本記事では、専門家としての実務的な視点を踏まえ、2026年の制度改正の全貌と、企業がとるべき対応について詳しく解説していきます。

2026年改正電気事業法の重要ポイント

2026年7月17日に成立した改正電気事業法は、電力の安定供給とエネルギー安全保障の強化を目的としています(経済産業省)。
この改正法には、発電事業者や小売電気事業者(家庭や企業に電気を販売する事業者)の事業運営に直結する複数の重要項目が含まれています。
実務上、特に影響が大きいと思われる主要な改正点を整理します。

大規模電源および送配電網の整備に対する公的資金の活用

一つ目は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)による融資業務の拡大です。

これまで広域機関による資金貸付けは、地域間送電線等の整備が中心でした。
改正法では、経済産業大臣が大規模発電事業者の大規模電源の整備計画や、一般送配電事業者等の地域内送電線等の整備計画を認定し、広域機関が財政投融資等を活用してその整備等に必要な資金の貸付けを行う仕組みが導入されます(経済産業省改正法の概要(PDF))。
あわせて、広域での電力取引によって生じる値差収益(供給エリアを越えて電気を売買するときに発生する差額)を国庫納付し、広域機関を通じた地域間・地域内送電線の整備等に活用する仕組みも設けられます(経済産業省)。
対象として想定されているのは、今後の需要増加や電気の脱炭素化を進めるうえで必要となる大規模な電源および送電網の整備です(経済産業省)。

太陽電池発電設備(メガソーラー等)に対する安全規制の強化

二つ目は、太陽電池発電設備に対する安全規制の強化です。

改正法では、太陽電池発電設備の設計不備による事故を防止するため、その支持物等について、第三者機関(登録適合性確認機関)による工事前の技術基準への適合性確認の対象とする仕組みが整備されます(経済産業省)。
また、製品・施工不良等、設置者のみでは原因究明・再発防止等が困難な場合に、製造・輸入販売事業者や工事業者に対して必要な協力を求める措置も設けられます。
近年、盛土や斜面上の大規模太陽光発電をめぐる地域トラブルが相次いだ経緯を踏まえると、こうした工事前の適合性確認は、事業者にとってもプロジェクトの予見可能性を高める仕組みになると思われます。

大規模電源の休廃止に関する事前協議

改正法では、大規模発電事業者が大規模電源を休廃止する際に、一般送配電事業者等と事前に協議を行うことが定められています(経済産業省)。
供給力の急激な減少を避け、電力の安定供給を確保するための仕組みであると考えられます。

中長期市場・需給調整市場に関する監督

あわせて、現行の翌日市場に加えて、今後重要となる中長期市場や需給調整市場を開設する各卸電力取引所を、経済産業大臣が指定・監督することができる制度が整備されました(経済産業省)。
また、小売電気事業の適正化のため、小売電気事業者の登録取消事由に一定期間の休止等が追加されます(経済産業省)。
市場の透明性・信頼性を確保するうえで、実務的にも重要な改正であると考えています。

施行時期の注意点

なお、この改正法は、一部の規定を除き、公布後9月以内に施行されるとされています(経済産業省)。

したがって、2026年7月の成立をもって直ちに全ての規定が動き出すわけではなく、施行日や具体的な運用は今後の政省令等で明確化される点に留意する必要があります。

電力需要家を直撃する脱炭素の新制度

2026年度は、電気事業法の改正にとどまらず、電力を使用する需要家企業の行動を直接的に変容させる新制度が複数スタートします。
発電サイドだけでなく、電気を使う側にも実務的な負荷がかかる、という点が2026年の特徴だと考えています。

省エネ法改正による屋根設置太陽光関連の対応

省エネ法の改正により、2026年度以降に提出される中長期計画書において、屋根設置太陽光発電設備の設置に関する定性的な目標の記載が求められる仕組みが導入されました(資源エネルギー庁)。
さらに、2027年度からは、一定規模以上のエネルギーを使用する事業者に対し、建物の屋根に太陽光発電設備を設置できる余地等の報告を求める制度が開始される予定です。
制度上は「設置義務化」ではなく、目標記載や設置余地の報告を通じて再エネ導入を促す設計となっていますが、対外的な開示を伴う仕組みである以上、実質的には各社の再エネ導入方針そのものが問われる制度であると考えられます。

排出量取引制度(GX-ETS)の本格導入

また、日本において本格的な排出量取引制度がスタートします。

GX-ETSは2023年度からの試行的な段階を経て、2026年度から本格稼働の段階に移行します(経済産業省)。
対象となるのは、CO2の直接排出量が前年度までの3年度平均で10万トン以上の事業者です。
この裾切基準は、諸外国の制度とも同程度の規模の排出源を捕捉する観点から設定されたものです。
また、事業者は毎年度、自ら制度対象になるか否かを確認する必要があるとされています。
これまで「努力目標」として扱われてきた自社の排出量が、そのまま企業の財務コストとして顕在化するという意味で、経営判断に直結する制度改正だと思われます。

企業がとるべき実務的な対応と今後の展望

これらの制度改正を俯瞰すると、国が大規模な電源や送配電網のインフラ整備を主導する一方で、各企業には自立的な脱炭素化の努力を強く求めている構造が見えてきます。

企業がとるべき実務的な対応について、大きく二つの観点から整理します。

自家消費型太陽光発電と蓄電池の導入検討

省エネ法における目標記載や、排出量取引制度における炭素コストの増加を考慮すると、自家消費型の太陽光発電設備および蓄電池の導入は、有効な炭素コスト防衛策になると考えられます。

また、電気事業法改正による太陽電池発電設備の安全規制強化を踏まえると、環境負荷や地域トラブルのリスクが少ない屋根置き型太陽光への関心は今後さらに高まると思われます。

PPA(Power Purchase Agreement、電力購入契約)による導入を検討する場合、契約期間中のリスク配分(契約解除条項、電力単価改定条項、設備の帰属など)の設計が最終的な経済効果を大きく左右する場面が多く、契約締結前の法務レビューの重要性はより一層高まっていくと考えられます。

法務・コンプライアンス体制の再構築

各種法令の遵守(コンプライアンス)も、これまで以上に厳格な対応が求められます。

太陽光発電設備を新設・リパワリング(設備の更新・増強)する際は、改正電気事業法に基づく手続きを、事業計画に確実に組み込む必要があります。

また、排出量取引制度への対応においては、事業者が毎年度、自ら制度対象該当性を確認しなければならないとされていることから、社内のデータ収集・管理体制を早期に構築することが不可欠だと考えています(経済産業省)。

とりわけ、Scope1(事業者自らによる直接排出)の算定は、事業所単位のエネルギー使用データを横断的に取りまとめる必要があり、財務・環境・法務部門を横断したガバナンス体制の構築が実務上のボトルネックになりやすい部分であると思われます。

まとめ

2026年に相次いで動き出す改正電気事業法、省エネ法改正、排出量取引制度は、日本のエネルギー市場に極めて大きな変革をもたらすと考えられます。

もっとも、改正電気事業法は公布後9月以内の施行とされ、省エネ法や排出量取引制度は2026年度以降に段階的に適用が進むため、施行時期の違いを踏まえた準備が重要になると考えています。

弁護士としてさまざまな企業の事業再編や環境対応をサポートしてきた経験から申し上げますと、こうした規制強化を単なるコスト増と捉えるのではなく、早期にリスクを可視化し、事業の強みへと転換していく姿勢が重要であると思われます。

再エネ導入は、電気代の削減という短期的なメリットにとどまらず、排出量取引制度下における「見えない資産」として機能し得る局面が今後増えていくと考えられます。

当事務所では、最新の法改正動向や再生可能エネルギービジネスに関する法務アドバイスを継続的に提供しておりますので、お困りの際はぜひご相談いただければと考えています。

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