[コラム] 太陽光発電の環境アセス対象が「40MWから20MWへ」 – メガソーラー規制強化と事業者が備えるべき実務ポイント

✅ ざっくり言うと
- 🔻 環境影響評価法(Environmental Impact Assessment Act)の対象となる太陽光発電事業の規模要件について、第1種事業を現行の4万kW(40MW)以上から2万kW(20MW)以上へ引き下げる方向性が、環境省の検討会報告書(案)で示されました。
- 📊 引き下げの根拠として、環境紛争事例の分析や全国知事会アンケート、林地開発許可のデータなど、太陽光発電特有の事情を裏づける定量的な材料が示されています。
- 🛠 規模要件の引き下げだけでなく、スクリーニング基準の見直しや審査・指導の実効性強化、事業の一連性(分割の防止)といった論点も併せて整理されています。
- 🌬 一方で風力発電については、規模要件の見直しから日が浅いことなどを理由に、当面は現行どおり据え置く方向とされています。
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はじめに
今回は、太陽光発電事業の環境アセスメント(環境影響評価、Environmental Impact Assessment)の対象となる規模要件の引き下げについて説明していきます。
いわゆるメガソーラーをめぐっては、自然環境や防災、景観の観点から各地で懸念の声が上がってきました。
こうした流れの中で、2025年12月に政府が「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を決定し、その一環として環境影響評価の対象規模の見直しが進められています。
2026年6月、環境省の「太陽光発電事業等の環境影響評価に関する検討会」が報告書(案)をとりまとめ、太陽光発電事業の規模要件を大きく引き下げる方向性を示しました。
再生可能エネルギー事業に携わる立場としては、対象が広がることで新たにアセス手続の対象となる案件が増える可能性があり、その実務的な影響は小さくないと考えています。
本稿では、一次資料である検討会の報告書(案)や配布資料に依拠しながら、何がどう変わるのか、その根拠は何か、そして事業者が実務上どのような点に備えておくべきかを整理していきます。
なお、本稿で紹介する内容は、あくまで検討会の報告書(案)に示された「方向性」であり、最終的には今後の政令改正等を経て確定する点にはご留意いただければと思います。
背景 – メガソーラー対策パッケージと検討会の設置
まず、今回の見直しがどのような文脈で出てきたのかを確認しておきます。
2012年の固定価格買取制度(FIT制度、Feed-in Tariff)の開始以降、特に太陽光発電の導入が急速に拡大しました。
その一方で、自然環境、安全、景観等の面から地域において様々な懸念が生じる事例がみられるようになったと整理されています(太陽光発電事業等の環境影響評価に関する検討会 報告書(案))。
こうした状況を受け、政府は2025年9月以降、関係省庁の連絡会議において関係法令の総点検を実施し、2025年12月23日の「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」において「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」を決定しました(太陽光発電事業等の環境影響評価に関する検討会 開催要綱)。
この対策パッケージにおいて、環境影響評価に関しては「環境影響評価法・電気事業法に基づく環境影響評価の対象となる太陽光発電事業の規模を見直し、事業者における環境配慮の促進を図る」とされました。
これを踏まえ、2026年1月から「太陽光発電事業等の環境影響評価に関する検討会」が開催され、法の対象となる太陽光発電事業の規模等について検討が行われてきました(検討会 開催要綱)。
今回ご紹介する報告書(案)は、その第5回(2026年6月1日)でとりまとめられたものです(検討会(第5回)議事資料)。
なお、対策パッケージは環境アセスだけにとどまる話ではありません。
森林法における林地開発許可の規律強化、景観法の運用指針改正、太陽光パネルの適切な廃棄・リサイクルの確保、太陽光発電設備のサイバーセキュリティ強化など、複数省庁にまたがる施策が並んでいます(検討会 参考資料集)。
今回の規模要件見直しは、その中の一つの柱と位置づけられると考えられます。
現行制度のおさらい – 第1種事業と第2種事業
見直しの内容に入る前に、環境影響評価法の基本的な仕組みを確認しておきます。専門外の方も多いのではないかと思われますので、丁寧に整理します。
環境影響評価法では、規模が大きく、特に環境影響の程度が著しいおそれがある事業を「第1種事業」とし、環境アセスメント手続を必ず行うこととしています。
これに準ずる規模の事業を「第2種事業」とし、手続を行うかどうかを個別に判断(スクリーニング)する仕組みとなっています(報告書(案))。
第1種事業の規模要件は、面積100haを基本要件として設定されています。
もっとも、事業種ごとの特徴を踏まえて、業種ごとに異なる下限が定められている点が重要です。
たとえば、埋立て・干拓事業と風力発電事業は基本要件の100haより小さい50ha(相当)を、廃棄物最終処分場事業は30ha以上を、それぞれ第1種事業の下限としています(報告書(案))。
太陽光発電事業は、2020年4月から法の対象事業となりました。
その際、事業区域面積100ha相当の平均的な出力や技術革新による発電効率の向上を考慮して、第1種事業を4万kW(40MW)以上としています(報告書(案))。
現行の規模要件を整理すると、以下のとおりです。
- 第1種事業(手続必須)。出力4万kW以上。
- 第2種事業(個別判定)。出力3万kW以上4万kW未満。
なお、第2種事業は、第1種事業の規模に対する比が一定以上のものに限られます。
この比の下限は、環境影響評価法施行令第6条において0.75と定められています(報告書(案))。4万kWの0.75倍が3万kWであり、これが現行の第2種事業の下限となっています。
何がどう変わるのか – 2万kW・1.5万kWへの引き下げ
報告書(案)で示された見直しの方向性は、太陽光発電事業の規模要件を次のように引き下げるというものです(報告書(案))。
- 第1種事業。4万kW(40MW)以上 → 2万kW(20MW、50ha相当)以上。
- 第2種事業。3万kW以上4万kW未満 → 1.5万kW(15MW)以上2万kW未満。
第2種事業の比の下限である0.75は維持されます。
第1種の下限を2万kWに引き下げたうえで、その0.75倍である1.5万kWを第2種の下限とする、という整理です(報告書(案))。
実務的に見ると、第1種事業の下限が40MWから20MWへと半減することになります。
これまでアセス手続の対象外であった20MW級から40MW未満の案件が、新たに手続の対象に取り込まれていくことになると考えられます。
開発計画の初期段階から環境配慮を織り込む必要性が一段と高まる点で、影響は大きいと思われます。
なぜ20,000kWなのか – 引き下げを支える根拠
弁護士としては、数字の根拠がどこにあるのかが気になるところです。
報告書(案)では、引き下げ先を2万kWとする理由が複数の角度から示されており、ここが一次資料を読む価値が大きい部分だと考えています。
100ha相当の出力の試算
太陽光発電を法の対象とした2020年当時、面積100ha相当の出力をもとに4万kWという水準が設定されました。
これに対し、これまで運転を開始した設備のデータを用いて試算すると、100ha相当の発電出力規模は35.5MWであったとされています。
さらに、直近の5年間(2020~2024年度)に運転を開始した施設に限定して試算すると、40.7MWであったと報告されています(報告書(案))。
この試算は、300ha以上または200MW以上の値を除外し、3σ法で外れ値を除いたうえで回帰分析を行ったものとされています(報告書(案)、全然関係ないですが、回帰分析という言葉を使ったのはMBAで講義を受けて以来久々です。)。
他の事業種との横並び
報告書(案)は、引き下げ先を2万kW(50ha相当)とする理由として、次の3点を挙げています(規模要件見直しの考え方、報告書(案))。
- 埋立て・干拓事業と風力発電事業が、基本要件の100haより小さい50haを第1種事業の規模の下限としていること。
- 供用時の環境影響も大きい廃棄物最終処分場の第1種事業の規模要件が30ha以上であること。
- 環境紛争が生じている1万2,000kW(30ha相当)以上3万kW未満(現行の法対象規模未満)の事業に着目すると、2万kW以上の事業が大宗を占めること。
太陽光発電特有の事情を裏づけるデータ
報告書(案)では、太陽光発電事業の特徴として、事業実施場所の多様性、広範囲の土地の改変、反射光・景観の影響、建設の容易性等が挙げられています(報告書(案))。
これらを裏づける材料として、次のようなデータが示されている点が実務的に注目されます。
第一に、環境紛争が生じている太陽光発電事業として抽出された40事業の分析です。
これは2020年4月1日から2025年11月27日までの新聞報道(全国紙4紙および地方紙45紙)を対象に抽出されたもので、主な紛争要因は土砂関係、自然環境関係、景観関係であったとされています(報告書(案))。
このうち事業地を特定できた39事業を見ると、事業区域の75%程度以上が森林で覆われている事業が21事業と、半数以上を占めました(報告書(案))。
また、出力を特定できた36事業のうち、3万kWを下回るものが18事業あり、規模の大小にかかわらず問題が発生していることも明らかになったとされています(報告書(案))。
第二に、全国知事会が2026年2月に全都道府県を対象に実施したアンケート調査です。
太陽光発電事業特有の特殊性に該当するのは何かという質問に対し、「特殊性有り」との回答が多い順に、設置場所(35)、反射光の影響(33)、森林開発の規模(30)、建設の容易性(25)、事業者の性質(24)という結果であったとされています(括弧内は「特殊性有り」と回答した都道府県数。)(報告書(案))。
第三に、林地開発許可のデータです。
2019年度から2024年度までの許可処分について、「工場・事業場」を目的とするものと「太陽光発電設備」を目的とするものを比較したところ、「工場・事業場」では50ha以上の林地開発許可を伴うものがなかった一方で、「太陽光発電設備」では50ha以上のものが16件あり、分析対象とした林地開発許可処分の面積ベースで23%を占めたとされています(報告書(案))。
太陽光発電が、他の面的開発と比べて大規模な森林改変を伴いやすいことを定量的に示すデータといえると考えられます。
これらを総合的に踏まえ、太陽光発電事業の第1種事業の規模要件については、2万kW(50ha相当)以上とすることが適当である、と整理されています(報告書(案))。
第2種事業の下限を1.5万kWとした理由
第2種事業については、比の下限0.75を引き下げる選択肢も検討されました。
もっとも、他法令における規定例との整合性等の観点から0.75を維持することが妥当であるとの見解が示されたこと、また1万2,000kW以上の環境紛争が生じている事業のうち1万5,000kW未満の規模の事業はわずかであり、これらを第2種事業とする根拠が十分にあるとは言えないことから、第2種事業の規模要件は1.5万kW以上とすることが適当である、とされました(報告書(案))。
規模引き下げだけではない – 併せて示された3つの論点
今回の見直しは、対象規模の引き下げにとどまりません。
報告書(案)では、併せて次の論点が整理されています。
事業者の実務に直結する部分ですので、以下確認します。
スクリーニング基準の見直し
第2種事業に該当する場合に行われる判定(スクリーニング)の基準についても、見直しの方向性が示されています。
具体的には、森林に係る関係法令による規制区域が存在する場合をスクリーニング基準に追加することや、特に傾斜地において土地の改変が行われる場合に、土地の安定性の観点から新たな基準を設けることが検討対象とされています(報告書(案))。
審査・指導の実効性強化
対策パッケージでは、規模の見直しに加えて「環境影響評価に関する審査の厳格化や指導の徹底等、実効性の強化を図る」とされました。
これを受けて、経済産業省において、環境影響評価段階、工事計画届出段階、設備運用段階の各段階で実効性を強化することが報告されています(報告書(案))。
たとえば環境影響評価段階では、反射光が影響を与える周辺施設や範囲を広く検討するなど、審査の視点を多角化することが挙げられています(報告書(案))。
法の対象とならない小規模事業への手当て
法や環境影響評価条例の対象とならない規模の小さい事業についても、自主的な環境配慮を促す取組が示されています。
具体的には、「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(2020年3月環境省)や、その補遺として動物・植物・生態系への影響の回避・低減について具体的な考え方を示した「太陽光発電における自然環境配慮の手引き」(2026年3月環境省)の周知、地理情報システムである環境アセスメントデータベース(EADAS)の活用などが挙げられています(報告書(案))。
事業者が押さえておきたい実務ポイント
ここまでの内容を踏まえ、事業者の立場から特に留意しておきたい点を、実務的な視点で整理します。
第一に、予見可能性の確保です。
報告書(案)では、新たに第1種事業または第2種事業となる事業が発生する場合に備えて、他の制度による手続からの乗換え(法第54条)や、既に一定の段階にある事業に対する適用除外(法第55条)といった経過措置が規定されていることに触れ、今回の見直しに当たっても、事業者や金融機関等の予見可能性の確保等の観点から、これらを適切に運用することが重要であるとしています(報告書(案))。
進行中の案件がどのタイミングで新基準の影響を受けるのかは、ファイナンスの前提にも関わる重要な論点だと考えています。
第二に、事業の一連性の考え方です。
アセス手続を回避する目的で事業を分割するような場合への対応として、経済産業省と環境省が連名で公表した「太陽電池発電所・風力発電所に係る環境影響評価法及び電気事業法に基づく環境影響評価における事業の一連性の考え方について」(2021年)が改めて周知される予定とされています(報告書(案))。
規模要件が引き下げられることで、いわゆる分割の論点はこれまで以上に注意が必要になると思われます。
第三に、地方公共団体の条例との関係です。
我が国の環境影響評価制度では、法の対象とならない規模の事業について、各地方公共団体が条例により手続を課すことで、法と条例が一体となって環境配慮を確保してきました(報告書(案))。
条例の対象規模は自治体ごとに大きく異なり、出力ベースや面積ベースなど基準もさまざまです(規模要件見直しの考え方)。
法の引き下げ後も、立地する自治体の条例の確認は引き続き欠かせないと考えられます。
風力発電は当面据え置きの方向
なお、同じ検討会では風力発電事業についても議論されていますが、こちらは当面、規模要件を据え置く方向とされています。
風力発電事業は2012年10月に法の対象となり、2021年10月に規模要件が見直され、現在は第1種事業が5万kW以上、第2種事業が3万7,500kW以上5万kW未満とされています(報告書(案))。
報告書(案)では、規模要件の見直しから日が浅いこと、今後建設される風力発電所は出力5万kW以上のものが主体となってくると見込まれることなどから、太陽光発電事業と異なり、第1種・第2種いずれの規模要件についても現時点では見直しを行わないことが妥当であるとされています(報告書(案))。
同じ再生可能エネルギーでも、事業の特性に応じて対応が分かれている点は、制度を理解するうえで押さえておきたいところです。
まとめ
今回は、太陽光発電事業の環境影響評価の対象となる規模要件の引き下げについて、環境省の検討会報告書(案)に基づいて整理しました。
ポイントを改めて整理すると、第1種事業が4万kW(40MW)以上から2万kW(20MW)以上へ、第2種事業が3万kW以上から1.5万kW以上へと引き下げられる方向性が示されたこと、その根拠として紛争事例の分析や知事会アンケート、林地開発許可のデータなど太陽光特有の事情が定量的に示されたこと、そして規模要件だけでなくスクリーニング基準の見直しや実効性強化、事業の一連性といった論点が併せて整理されたことが挙げられます(報告書(案))。
報告書(案)の「おわりに」では、コーポレートPPA(Corporate Power Purchase Agreement)の普及に伴い、再生可能エネルギーの買い手が環境価値を重視する傾向が強まっており、環境に配慮した事業であることが事業の競争力につながると指摘されています(報告書(案))。
規制対応をコストとしてのみ捉えるのではなく、環境配慮を事業の付加価値として組み込んでいく視点が、これからの再エネ事業ではますます重要になっていくと考えています。
本稿で紹介した内容は検討会の報告書(案)に示された方向性であり、最終的な内容は今後の政令改正等を経て確定することになります。
具体的な案件への影響については、進行状況や立地条件によって判断が分かれる場面もあると思われますので、個別の検討に当たっては専門家にご相談いただくことをお勧めします。
