[コラム] 経産省・第3回再エネ主力電源化小委員会を読む – 事業用太陽光FIT/FIPが「地域共生型」に絞り込まれる日

✅ ざっくり言うと
- ☀️ 2026年7月28日開催の経産省・第3回再生可能エネルギー主力電源化小委員会で、事業用太陽光へのFIT/FIP支援を「地域共生型」に絞り込む方針が示されたと考えられます
- 🏘️ 2027年度以降の事業用太陽光(地上設置)へのFIT/FIP支援は、廃止を含めて検討するとされており、実質的に制度の基本設計が書き換えられる局面と考えています
- ⚖️ 支援対象類型の選定は「3つの考え方」と「8つの制度的論点」を軸に議論され、認定基準・FIT/FIPの別・支援価格・入札制など事業スキームに直結する論点が並びます
- 💡 事業者団体(REASP・JPEA)、自治体(浜松市・箕輪町)、金融機関、送配電事業者の間で描く「望ましい類型」には共通点と温度差があり、次回以降の絞り込みの行方を占ううえで無視できない材料が揃ってきたと思われます
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今回はかなり文章が長いため、音声要約でざっくり掴んでいただくこともお勧めです。

はじめに
今回は、経済産業省・総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー主力電源化小委員会(第3回、2026年7月28日開催)で議論された「事業用太陽光発電におけるFIT/FIP制度の支援重点化」について説明していきます。
同日の小委員会では、分散型エネルギー推進戦略ワーキンググループの議論報告、事業用太陽光のFIT/FIP支援重点化、洋上風力発電の状況報告という3つの大きなテーマが取り扱われました。
このうち、再エネ事業実務および契約実務に最も直接的なインパクトを与えるのが、事業用太陽光のFIT/FIP支援重点化に関する議論だと考えられます。
弁護士として日々再エネ案件に関与している立場からすると、この論点は既存案件のスキーム見直しから、新規案件の類型選定、DD項目の再設計、PPA・EPC・O&M契約における条項の書き分けに至るまで、実務全般に影響が及ぶ極めて重い論点だと考えています。
本稿は、制度の解説にとどまらず、この方針転換が事業者の実務、案件スキーム、認定対応、契約・デューデリジェンス、にどう落ちてくるか、という事業者目線で読み解いていきます。
会議資料は経済産業省のウェブサイトで公開されており、第3回再生可能エネルギー主力電源化小委員会の配付資料一覧から確認することができます。
本稿では、資料2(事務局資料)を中核に据えつつ、資料3(REASP)、資料4(JPEA)、資料5(浜松市)、資料6(箕輪町)、参考資料2(高村ゆかり委員)、参考資料3(原田文代委員)、参考資料4(岡本浩オブザーバー)の関連論点を横断的に読み解いていきます。
議論の出発点──なぜ今「支援重点化」なのか
上流にある「メガソーラー対策パッケージ」の存在
今回の支援重点化議論の直接的な上流には、資料2で言及されている「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」があります。
このパッケージは、地上設置型メガソーラーをめぐる地域トラブル、防災・環境・景観面での懸念、廃棄処理の不透明さといった課題を背景に取りまとめられたものです。
規制強化と支援制度の見直しの両輪で構成されており、規制側では森林法や電気事業法等の運用強化が、支援側ではFIT/FIP制度そのものの再設計が打ち出されている点が重要と考えます。
パッケージが打ち出した2つの方針
事業用太陽光へのFIT/FIP制度での支援のあり方に関して、資料2ではパッケージの内容として以下の2点が明示されています。
①再エネ賦課金を用いたFIT/FIP制度による支援に関し、2027年度以降の事業用太陽光(地上設置)について廃止を含めて検討すること。
②屋根設置等の地域共生が図られた導入支援への重点化を行うこと。
この2点は独立の論点ではなく、①によって従来型の地上設置メガソーラー支援のフェーズを終了させたうえで、②によって次のフェーズ(地域共生型太陽光)に賦課金原資を集中投下するという、一体の政策転換として理解する必要があると考えます。
なお、第3回の事務局資料では、この方針を一歩進めて、地上設置の事業用太陽光について「2027年度以降、FIT/FIP制度における新規支援の対象外とする」と、パッケージの「廃止を含めて検討」よりも踏み込んだ表現で整理されている点にも留意が必要です(資料2)。
検討の進め方
資料2によれば、本小委員会ではまず①FIT/FIP制度で支援の重点化を行うことを念頭に、地域共生が図られた形で導入が期待される太陽光発電の類型について検討し、その後、②具体の制度的論点(認定基準、FIT/FIPの別、支援価格・期間等)について、本小委員会や調達価格等算定委員会で検討を行うとされています。
いかなる太陽光発電の類型を支援重点化の対象とするかについては、関係者(関係省庁・事業者団体・地方自治体)の意見を幅広く聴取したうえで検討が進められる方針とされており、前回会合で関係省庁からのヒアリングが、今回会合で事業者団体・地方自治体からのヒアリングが実施されたという整理と考えられます。
弁護士視点コメント – 「単なる価格改定ではない」ということ
弁護士として強調しておきたいのは、これは調達価格の毎年改定のような通常のパラメータ調整ではなく、FIT/FIP制度の対象範囲そのものの再定義であるということです。
対象類型の再定義は、認定基準、契約の表明保証、事業譲渡時のデューデリジェンス項目、プロジェクトファイナンスの与信判断、既認定案件の経過措置の全てに波及するため、実務家としては早期の情報整理と社内・顧客向けアップデートが必要な局面と考えています。
支援重点化の対象類型を選ぶ「3つの考え方」
資料2では、支援重点化の対象とする類型は、以下の①〜③を満たすものであることが重要ではないか、と提起されています。
①今後の導入──政策的位置づけと導入拡大の観点
第1の視点は、導入可能性や政策的位置づけを総合的に勘案し、再エネの導入拡大の観点から重要な類型かどうか、というものです。
言い換えれば、その類型が2040年に向けた再エネ導入目標達成に定量的に寄与するかを問う視点と考えられます。
資料3(REASP)によれば、太陽光発電の設備容量見通しは、2030年度で103.5〜117.6GW、2040年度で203〜280GWとされ、直近の3.5〜5GW/年の導入ペースから、2040年に向けて10〜16GW/年へ大幅な加速が必要とされています。
この量的要請を満たすためには、限られた類型に絞り込みつつも導入ポテンシャルが十分に大きい類型を選ぶ必要があり、この意味で「政策的位置づけ」の評価は避けて通れない論点だと考えられます。
②地域との共生
第2の視点は、地域との共生であり、さらに(a)公益への追加的影響の度合いと、(b)自治体や国の事業への関与の2つの下位要素で構成されています。
(a)については、安全面、防災面、景観、環境等の公益への追加的な影響の度合いを評価するものであり、屋根設置や既開発済み用地の活用が高評価となる一方、山林開発や新規造成を伴う地上設置は評価が下がる構造となっていると考えられます。
(b)については、自治体や国の事業への関与──温対法上の促進区域指定、国有地・公有地の利用、自治体認定事業といった公的プロセスを経ることで、地域理解が担保されているかを問う視点です。
弁護士としてはこの(b)が重要で、認定基準に「自治体との協定締結」「議会承認」「首長関与」等が正式に組み込まれた場合、契約実務側でも協定書ドラフティングや行政協議の記録化が新たなDD項目となる可能性が高いと考えています。
③FIT/FIP制度の特性
第3の視点は、FIT/FIP制度の運用可能性です。
具体的には、客観的な基準・証憑で明確に外延を画定・確認できる類型であること、および逆潮流量の売電が想定される類型であることの2点が挙げられています。
前者は認定審査コストと予見可能性の担保、後者は自家消費中心の類型はそもそもFIT/FIPの支援対象として整合しない、という制度論的な整理と考えられます。
「地域共生」の法的外延をどう画定するか
3つの考え方のうち、実務的にもっとも扱いが難しいのが「地域共生」概念の法的画定です。
「地域共生」は本来的に価値判断を含む概念であるため、これを認定基準として運用可能な水準まで落とし込むためには、外形的・客観的な指標に置換する作業が必要と考えられます。
具体的には、①温対法上の促進区域指定の有無、②自治体条例に基づくガイドラインへの適合、③自治体との協定締結、④地元説明会の開催実績、⑤地域新電力への卸供給契約の有無、⑥自立運転機能や災害時給電コンセントの設置、といった外形的な指標に置き換えていくアプローチが想定されると考えられます。
弁護士としては、こうした外形的指標を契約書・協定書・議事録の形で証憑化しておく作業が、新規案件のクロージング要件に組み込まれていく可能性が高いと考えています。
今後検討される「8つの制度的論点」
資料2では、今後検討を行う必要がある具体の制度的論点として、以下の項目が挙げられています。それぞれ実務への影響を含めて見ていきます。
設備の区分等や認定基準等
これは類型ごとにどのような設備区分を設定するか、また認定審査でどのような証憑を求めるかの論点です。
屋根設置、営農型、ソーラーカーポート、水上設置、インフラ空間活用など、類型ごとに設備の形態や設置条件が大きく異なるため、認定基準もそれぞれ個別設計となる可能性が高いと考えられます。
実務的には、認定申請書類のテンプレート化、証憑の準備リストの整備が急務になると考えています。
説明会等の適用
改正再エネ特措法で導入された事前説明会義務等の適用範囲をどう設計するかの論点です。
地域共生型に類型を絞り込む以上、説明会義務の緩和ではなく、むしろ実効性強化の方向で議論される可能性が高いと考えられます。
一方で、屋根設置や既利用空間の活用など、地域影響が限定的な類型については、説明会義務の合理化・軽量化が図られる余地もあると思われます。
地域活用要件
現行のFIT制度で導入されている「地域活用要件」(自家消費・災害時活用の要件)を、事業用太陽光にも拡張適用するかの論点です。
営農型やソーラーカーポートに自立運転機能設置を必須化する、といった方向の議論が想定されると考えられます。
廃棄等費用積立制度の適用
現行の廃棄等費用積立制度を、新たな支援対象類型にどう適用するかの論点です。
屋根設置や建材一体型(BIPV)については、廃棄プロセスが地上設置と大きく異なるため、積立基準額の見直しが必要になる可能性があります。
営農型についても、農地への影響を考慮した積立設計が求められる可能性があると考えられます。
FIT/FIPの別
各類型についてFITとFIPのいずれで支援するかの論点です。
REASPは資料3において、市場統合と高付加価値化を第3のアプローチとして掲げており、これはFIP移行を含意していると読めます。
一方、屋根設置の小規模案件については、事業者側の市場対応能力を踏まえるとFIT維持の合理性もあり、類型ごとに使い分けが議論されると考えられます。
入札制の適用
一定規模以上の案件に入札制を適用するかの論点です。
現行の入札制の対象範囲・入札下限価格・上限価格の設定を、新たな重点化類型にどう当てはめるかが議論されます。
営農型やソーラーカーポートのように相対的にコストが高い類型に入札制を適用するかについては、慎重な設計が必要と考えられます。
支援価格・期間、初期投資支援スキームの適用
調達価格、調達期間、加えて初期投資支援型のスキームを重点化類型に適用するかの論点です。
初期投資支援スキームは、設備の初期費用を支援する代わりに調達価格を抑制する構造となるため、地産地消・自家消費型の類型と親和性が高いと考えられます。
弁護士としては、支援期間と減価償却期間、プロジェクトファイナンスの返済スケジュール、PPAの契約期間の整合性を再点検する必要が生じると考えています。
解体等積立基準額
上で触れた廃棄等費用積立制度の中核である解体等積立基準額を、類型ごとにどう設定するかの論点です。
地上設置と屋根設置では解体費用が大きく異なるため、類型別の基準額設定が実務的に妥当と考えられます。
8つの論点が事業スキーム・契約実務に与える影響
これら8つの論点が具体化されていく過程で、以下の実務対応が必要となると考えられます。
PPA契約においては、支援制度の変更に伴う価格改定条項の見直しが必要になります。
EPC契約においては、認定基準に対応した設計・調達要件の書き込みが必要となります。
O&M契約においては、地域活用要件(自立運転機能の維持等)に対応した業務範囲の再定義が求められます。
プロジェクトファイナンスにおいては、認定リスク・経過措置リスクへの与信判断が変化する可能性が高いと考えられます。
事業譲渡契約においては、認定要件充足の表明保証、将来的な認定条件変更に関するリスク配分の書き分けが必要となります。
想定される「地域共生型」類型カタログ
資料2、資料3(REASP)、資料4(JPEA)のヒアリングで挙げられた候補類型を横断的に整理します。
屋根設置型
既利用空間の活用のため、公益への追加的影響が最も小さい類型と評価されます。
戸建住宅、集合住宅、商業系・公共系・産業系建築物、および建材一体型(BIPV)まで、幅広く含まれます。
資料5(浜松市)によれば、同市では設置計画書届出件数で2024年度にNon-FIT(自家消費型)がFITを逆転しており、屋根設置は自家消費との親和性が高い類型と考えられます。
公有地・自治体管理地での事業
自治体等の管理下で実施される事業は、地域共生要件を制度的に担保しやすい類型と考えられます。
具体的には、空港、港湾、道路、鉄道関係等のインフラ関連施設の敷地・開発区域内での事業、および地方公共団体や自治会等が保有・管理する「ため池」等の水上空間での事業が挙げられます。
温対法上の促進区域内事業
改正温対法に基づき自治体が指定した「脱炭素促進区域」内での事業は、地域住民の合意形成プロセスを経ているため、地域共生要件を満たしやすい類型と考えられます。
資料6(箕輪町)のように、環境審議会の下部組織として特別委員会を設置し、複数回の審議を経て促進区域を設定した事例は、まさにこの類型の典型と言えます。
ソーラーカーポート
駐車場等の建築物に付随する設置形態で、新規造成を伴わずかつ既存の駐車機能と両立する典型的な「Dual-use」の類型です。
REASP・JPEAともに支援対象として明示的に挙げており、業界の共通見解となっていると考えられます。
追加コストがかかる点をどう支援水準に反映するかが実務的な論点になると思われます。
開発済み用地の再活用
工業団地や商業施設等の敷地内の駐車場や空き地等、開発済みの土地を活用することで地域産業の活性化に資する類型です。
これも新規造成を伴わない類型のため、公益への追加的影響が限定的と評価されます。
未利用地の再活用
資料4(JPEA)では、ゴルフ場跡地、スキー場跡地、最終処分場跡地、採石場跡地等、開発済みだが使われなくなった土地を活用する類型が挙げられています。
土地の再生・再活用という社会的意義も加味されるため、支援重点化の対象として合理性が認められる可能性があると考えられます。
一方で、跡地の土壌汚染、地盤安定性、周辺環境への影響については、個別案件ごとのデューデリジェンスが不可欠と考えます。
営農型太陽光(ソーラーシェアリング)
農業と発電を両立させる類型で、参考資料2で高村ゆかり委員が強く支援の必要性を主張しています。
参考資料2に引用されている農林水産省の統計によれば、農業就業人口はここ20年で約57%減少しており、2020年の基幹的農業従事者数のうち、65歳以上は全体の70%(94万9千人)を占め、49歳以下の若年層の割合は11%(14万7千人)とされています(農林水産省 農業労働力に関する統計)。
農地面積も、2021年は435万haで、1960年の607万haと比べて28%減少、2005年の469万haと比べて7%減少しているとされています(農林水産省 令和3年度食料・農業・農村白書)。
営農型太陽光は、こうした農業経営難のなかで発電事業収益を通じて営農継続を支える仕組みであり、資料2でも「望ましい営農型の明確化と不適切な取組への厳格対応を前提」とする形で支援類型に位置づけられています。
水上太陽光
ため池、ダム等の水上空間を活用する類型です。
新規造成を伴わず、既存の水面利用と両立するため、Dual-useの一形態として評価されます。
一方で、水面利用権の整理、水利組合との調整、施設管理者との調整といった契約実務が独特の論点として存在すると考えられます。
遮音壁・BIPV等の建材一体型
道路や鉄道の遮音壁への設置、建物外装への建材一体型(BIPV)の設置など、建材や既存インフラと一体化した類型です。
資料4(JPEA)では今後の主流形態の一つとして明示されており、支援類型に組み込まれる可能性が高いと考えられます。
業界団体の主張を比較して読む
REASP(再生可能エネルギー長期安定電源推進協会)の主張
REASPは第7次エネルギー基本計画策定の際に提言した「再エネ大量導入・主力電源化に向けた3つのアプローチ」を今回も再提示しています。
第1に「再エネを増やす」──従来の開発手法やコスト感では再エネ適地が減少するなか、新たな取組も含めた導入拡大に向けた工夫・支援の必要性。
第2に「再エネを減らさない」──出力制御を可能な限り低減させ、供給量をkWhベースで増加させる取組の必要性。
第3に「再エネの市場統合と高付加価値化」──再エネ事業者も電力システムに対し責任ある事業者として運転していく必要性。
太陽光発電の設備容量見通しについては、2030年度で103.5〜117.6GW、2040年度で203〜280GWとされ、導入ペースを直近の3.5〜5GW/年から10〜16GW/年へ大幅にアップする必要があると指摘されています。
FIT/FIP制度において支援を希望する事業類型は、①国・地方自治体の関与(国有地・公有地における再エネ開発、促進区域における再エネ開発、自治体新電力への卸供給および基金の活用)、②農業を支える(営農型太陽光発電)、③その他(災害時における地域への電力供給、ソーラーカーポート)、の3類型に整理されています。
REASPは地域共生を「地域に受け入れられ、地域のプラスになり、地域社会が持続的に成り立つ関係をつくること」と定義しており、単なる形式的な地元同意ではなく、地域課題解決(農地の荒廃、農林水産業の衰退、エネルギーの富の流出、地元企業の産業競争力強化、防災対策等)に踏み込んで貢献することを求めている点が特徴的です。
また、REASP資料の重要な提起として「2032年問題」があります。これは2012年のFIT制度開始から20年目にあたる2032年に、初期のFIT認定案件が調達期間終了を迎えることに伴う事業継続性の課題であると考えられます。
JPEA(太陽光発電協会)の主張
JPEAは「自然共生・地域裨益型」というキーワードを掲げ、太陽光発電を「地産地消型エネルギーとして地域経済に好循環を生む」姿として位置づけています。
JPEAは事業者の行動規範として「地域との共生・共創」および「自然環境配慮と生物多様性の保全」を掲げており、法令遵守はもとより地域住民との信頼関係構築を強調しています。
JPEA独自の取組として、地域貢献型の太陽光発電の普及拡大に資する取組・事業を表彰する「ソーラーウィーク大賞」を2023年に創設したことも紹介されています。
FIT/FIP支援を重点化すべき事業類型は、「公益性・地域貢献」が期待される「土地利用」の観点と、「地産地消・地域レジリエンスへの貢献」の観点の2軸で類型化されています。
土地利用の観点では、①公有地・自治体等管理地(インフラ関連施設敷地、ため池等の水上空間)、②促進区域内事業、③開発済み用地の再活用(工業団地・商業施設の駐車場・空き地)、④未利用地の再活用(ゴルフ場跡地、スキー場跡地、最終処分場跡地、採石場跡地)が挙げられます。
地産地消・地域レジリエンスの観点では、①地方公共団体や地域事業者がPPA契約等で需要家となる場合、②地域新電力の関与により地域内での電力供給が計画されている場合、③発電設備の自立運転機能等を活用し災害時に電力を供給する場合、のいずれかを満たすことが要件として整理されています。
JPEAが強調するキーワードとして「Dual-use」があり、今後は公園・山林等の新規開発は殆どなくなり、他用途との併用を前提とした形態(建物設置、営農型、ゴルフ場跡地、水上太陽光、駐車場、空港施設内等)が主流になると位置づけられています。
REASPとJPEAの共通点と相違点
両団体の主張を比較すると、共通点は明確です。
公有地・促進区域・営農型・ソーラーカーポート・災害時電力供給・水上太陽光といった主要類型は、両団体ともに支援対象として合意しており、これらは業界コンセンサスと呼べる水準に達していると考えられます。
相違点は、切り口と強調点にあります。
REASPは3つのアプローチという上位概念を先に置き、支援対象類型を「関与主体」と「機能」の観点で整理する傾向があります。
JPEAは「自然共生・地域裨益型」という価値概念を先に置き、支援対象類型を「土地利用」と「地産地消・レジリエンス」の観点で整理する傾向があります。
いずれも実質的には同じ類型群を指しているものの、認定基準に落とし込む段階では、REASPの「関与主体」軸とJPEAの「土地利用」軸のどちらを主軸に据えるかで、証憑要件が変わる可能性があると考えます。
弁護士としては、両軸を併存させる形の認定基準になる可能性が高く、事業者側は両方の証憑を揃える準備をしておくのが実務的と考えます。
自治体からの声 – 浜松市と箕輪町の対照的な提言
浜松市 – 全国1位の運用実績からの提言
資料5によれば、経済産業省「再エネ特措法による太陽光発電設備導入量」における10kW以上の太陽光発電の導入件数(10,172件)並びに導入量(648,596kW)において、浜松市は2015年度に全国1位になって以来、現在までその順位を継続中とされています。
浜松市の制度整備の歩みとして、資料5では以下が示されています。
2012年4月、新エネルギー導入に特化した専属組織を設置。
太陽光発電施設設置要綱の施行、調整池工法基準や緑地率の撤廃等の規制緩和。
2019年4月、浜松市太陽光発電施設に関するガイドラインを制定。
2020年3月、「浜松市域”RE100″」および「2050年ゼロカーボンシティ」を表明。
2020年4月、浜松市適正な再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例を制定。
2022年、カーボンニュートラル推進事業本部を設置。
2024〜2028年度、地域脱炭素移行・再エネ推進交付金 総額11億円+浜松市協調補助金を活用。
浜松市ではFITからNon-FIT(自家消費型)への移行が進んでおり、設置計画書届出件数では2024年度にNon-FITがFITを逆転しました。
2024・2025年度で7,539kWの事業用自家消費型設備を導入しており、全国トップ自治体でも既に自家消費型が主流化している状況が示されています。
2040年度目標は、太陽光発電導入量を約91万MWh(2024年度)から約157万MWh(市内総電力使用量の1/3)へ拡大するというもので、公共施設間での「マイクログリッド(市内8か所)」形成による地産地消モデルの構築も推進されています。
浜松市の資料の締めくくりのキーメッセージは「国による制度・補助金等、後押しが不可欠」というもので、全国1位の自治体をもってしても、今後の目標達成には国の制度的支援が不可欠であることが強調されています。
箕輪町 – 小規模自治体の先進モデル
資料6によれば、長野県箕輪町の「みのわサスティナブルエネルギーPG」は、2025年(令和7年)4月に運用開始された、小規模自治体としては極めて先進的な取組です。
箕輪町の地球温暖化対策実行計画は、2022年(令和4年)7月1日に施行され、区域施策編(促進区域も設定)と事務事業編を含み、2030年度までに2013年度比でCO₂実質60%削減を目標としています。
計画策定にあたっては、2021年6月に町環境保全条例を一部改正し、環境審議会の下部組織として「必要に応じて特別委員会を設置できる」旨を規定。
2021年7月に町地球温暖化対策特別委員会を設置し、2022年3月まで5回開催という丁寧な合意形成プロセスを経ています。
「みのわサスティナブルエネルギーPG」の施設概要は資料6において以下のように示されています。
ソーラーカーポート310.2kWを核とし、大型蓄電池を付属したV2Xシステム(V2X双方向充電器10基は、公共施設への導入実績としては国内最大規模とされています)を備えています。
役場庁舎、保健センター、情報通信センター、文化センター、図書館の5施設を自営線(6,600V)で接続し、エネルギーマネジメントシステム(EMS)で制御。
導入効果として、再エネ自給率43%、年間CO₂排出量163t削減が見込まれています。
停電時にはV2Xシステムから役場の「災害対策本部」へ電源を供給(5日以上の供給が可能)、避難所へはV2Xで充電したEVを派遣し非常電源として活用する運用協定を、PPA事業者と締結しています。
「PG」の名称には、ソーラーカーポートを核とした持続可能な電力網「パーキング グリッド」と、脱炭素プロジェクトをやり抜く力となる象徴施設「プロジェクト グリット」の2つの意味が込められているとのことです。
箕輪町の運営方針で特筆すべきは、「設備導入に必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)は極力地元調達することを大方針として、自治体主導で進めている」という点です。
地元金融機関の100%出資子会社によるオンサイトPPA事業、地元ケーブルテレビ事業者による地域新電力事業の継承など、地域内でのエコシステム構築を実現していることが示されています。
大都市モデル(浜松)と小規模自治体モデル(箕輪)の対比
浜松市と箕輪町の提言を並べて読むと、対照的でありながら相補的な構造が浮かび上がります。
浜松市は、規模の大きさゆえに条例整備・ガイドライン制定・専門組織設置といった「制度インフラ整備型」のアプローチで、面としての導入拡大を実現しています。
箕輪町は、規模が小さいことを逆に生かし、地元金融・地元事業者・地元CATVを組み合わせた「エコシステム型」のアプローチで、点としての深堀りを実現しています。
FIT/FIP支援重点化の制度設計にあたっては、両モデルのいずれもが実現可能となるような柔軟な設計が必要であり、認定基準や支援水準を画一化すると、いずれか一方のモデルに不利益が生じる可能性があると考えられます。
浜松市が明言した「国による制度・補助金等、後押しが不可欠」というメッセージは、自治体単独では持続不可能である現実を示しており、国の制度設計における自治体連携型類型の重要性を裏付けていると思われます。
委員・オブザーバーの提出意見から読み解く「落とし所」
参考資料2(高村委員) – 営農型太陽光の擁護
高村委員は、営農型太陽光を「農業者が実施する地域と共生した『太陽光発電活用型農業』」と位置づけ、その支援の必要性を強く主張しています。
参考資料2では、食料・エネルギーの自給率向上、食料安全保障とエネルギー安全保障の同時実現の観点から、営農型太陽光の意義が強調されています。
営農型太陽光による具体的な便益として、耕作放棄地の農地としての復活、若い世代の新規就農者の雇用、災害停電時の自立運転モードでの地域住民への電力提供、「サステナブルな抹茶」としての海外展開等の付加価値創出が挙げられています。
制度論として最も注目すべきは、農地転用許可の基準を、収穫量や遮光率といった画一的な指標ではなく、地域によって様々な環境・営農条件・課題がある中で農業者の創意工夫や努力、および地域の多様な便益を組み入れた基準に改めることを求めている点です。
弁護士として補足すると、この提言が実現すれば、農地法・農山漁村再エネ法の運用が大きく変わり、営農型案件のDDにおける評価軸自体が再構成されることになると考えます。
具体的には、現在の定量基準に加え、地域便益を評価する定性基準が新たに導入される可能性があり、案件ごとの証憑準備がより多角的になると考えられます。
参考資料3(原田委員) – 金融機関の視点
参考資料3では、事務局方針に対して全体的に賛成の立場が明確にされたうえで、以下の3点について具体的な意見が述べられています。
第1に、分散型エネルギー(資料1関連)について。系統用蓄電池は、調整力市場や需給運用への貢献に加え、再エネ余剰時の充電・需給ひっ迫時の放電等を通じた重要な調整リソースであり、将来的にはLDES(長時間エネルギー貯蔵技術、Long Duration Energy Storage)のような長時間エネルギー貯蔵技術も長期調整力として重要性を増していくとの見解が示されています。
DRについても、実績把握や導入拡大に加え、IoT化、インセンティブ設計等を通じた需要側リソースの実効的活用が重要であり、蓄電池・LDES・DRを再エネ主力電源化を支える柔軟性リソースとして一体的に育成することが提言されています。
第2に、洋上風力発電(参考資料1関連)について。浮体式洋上風力については、商用化やサプライチェーン構築を見据え、欧州並みの300MW程度の一定規模を有する実証を早期に進めることが重要とされています。
当面の案件形成における30円/kWh程度という水準は、事業遂行と国民負担の抑制を図る観点から一定の合理性を有するものの、その前提となるP-IRR6%、割引率3%という条件は、事業者側にとってなお厳しい可能性があると指摘されています。
特に既存案件が当該水準に収まるのか、収まらない場合に制度上どのように取り扱うのかについて、今後検討を深める必要があるとの意見です。
第3に、事業用太陽光(資料2〜4関連)について。REASPからの災害時における地域への電力供給を行う事業をFIT/FIP支援対象に含める提案について、避難所の運営やBCPの観点から有益な案とする一方で、地域防災計画との連携や、平時から事業者が自治体・地域とコミュニケーションを取り、災害時の具体的なオペレーションを取り決める等の実効性確保の取組が必要とされています。
農地関連では、荒廃農地の客観的な区分・確認方法について論点が残っており、営農型太陽光についても早期に支援重点化に係る議論や制度設計が行われることが望まれるとの意見です。
さらに「2032年問題」(卒FIT/FIP後の事業継続)について、金融機関・投資家として卒FIT/FIP後にも事業継続が図られるようなスキームで支援していく意向が示されています。
原田委員の意見は、金融機関の立場から「支援対象の範囲」だけでなく「支援終了後のスキーム」までを射程に入れており、実務家として最も注目すべきコメントの一つと考えます。
参考資料4(岡本浩オブザーバー) – 送配電事業者の視点
参考資料4では、太陽光発電については、地域との共生が重要であり、既存建物の活用や農業との共生を前提とする営農型太陽光などの推進により、自家発電・自家消費、さらに地産地消として扱うことで、地域の災害時活用やレジリエンス向上に寄与するため、地域住民からもその価値を理解されやすくなるとの評価が示されています。
さらに、一般送配電事業者の観点から、地産地消が進むことでエリア内の潮流バランスを取りやすくなり、結果として再エネ導入の促進につながるとの見解が示されています。
地産地消型の活用を促進するとともに、その効果を定量的に示していただきたいという要望で締めくくられています。
送配電事業者の立場から、地産地消の推進が系統運用側にとっても便益があることを明示しており、地域共生型類型の支援根拠に「系統運用の効率化」という新たな論拠が加わったと理解することができます。
弁護士から見た実務上の論点と検討課題
ここからは弁護士として、支援重点化議論が具体化した際に想定される実務上の論点と検討課題を、詳細に見ていきます。
既認定案件の経過措置とグランドファザリング
2027年度以降の地上設置事業用太陽光へのFIT/FIP支援を廃止する場合、既に認定を受けた案件(既認定案件)については、当然ながらグランドファザリング(既得権保護)が問題になります。
FIT法の従来の運用では、認定を受けた時点の条件(調達価格、調達期間)が原則として適用され続けるため、既認定案件そのものは基本的に保護されると考えられます。
問題は、以下のような「認定と稼働の間」または「認定後の変更」に位置する案件です。
第1に、認定は受けているが稼働開始が2027年度以降にずれ込む案件について、認定条件がそのまま維持されるか、それとも新制度下での再認定が求められるかは、経過措置の設計次第となります。
第2に、認定後の設備変更(増設、パネル更新、蓄電池追加等)について、新制度下での取扱いがどうなるかも論点です。
第3に、事業譲渡(M&A、SPVの株式譲渡、事業の一部譲渡)に伴う認定の承継について、新制度下でも従来と同様に承継が認められるかは慎重な確認が必要と考えます。
弁護士としては、既認定案件の売買契約や事業譲渡契約における表明保証条項を、以下の観点で見直す必要があると考えます。
①認定の有効性に関する表明保証の記載を、新制度下でも維持される認定であることの表明にまで拡張するか。
②将来の制度変更リスクを、売主・買主のいずれが負担するかを明確化する条項の追加。
③認定条件の変更が生じた場合の価格調整条項の設計。
「地域共生」の外延を契約・条例・認定基準の三層でどう固定するか
上で触れた通り、「地域共生」の法的画定は最も難しい実務課題の一つです。
これを実務で運用可能な形に落とし込むには、以下の三層構造で外形化する必要があると考えます。
第1層は認定基準です。国の認定基準に「自治体との協定締結」「促進区域指定」「議会承認」「首長関与」等の外形要件が組み込まれる可能性があります。
この場合、認定申請時に協定書の写し、区域指定告示、議会議事録等の証憑を揃える必要が生じます。
第2層は自治体条例・ガイドラインです。浜松市の条例のように、自治体レベルで地域共生の内容を具体化する条例やガイドラインが整備されている場合、これへの適合が事実上の要件となります。
この場合、案件ごとに立地自治体の条例・ガイドライン内容を精査し、適合性を確認する法務DDが必要となります。
第3層は個別契約です。PPA契約、EPC契約、O&M契約、自治体との協定書等の個別契約に、地域共生要件の維持義務、災害時対応義務、地元説明会開催義務等の条項を書き込む必要が生じる可能性があります。
これら三層の整合性を確保する作業は、認定審査対応、行政協議、契約起案の三方面での連携が必要となり、事業者側の法務体制の再構築を求めるものと考えます。
地上設置PPA・オフサイトPPAへの波及
2027年度以降の地上設置FIT/FIP廃止方針は、直接的にはFIT/FIP認定案件のみに影響しますが、間接的には地上設置PPA市場全体に波及する可能性があります。
これまで地上設置メガソーラーは、FIT/FIP認定を受けた案件が主流でしたが、支援廃止後は、Non-FIT/コーポレートPPAスキームでの案件組成が中心になると考えられます。
コーポレートPPAは、需要家(企業)が発電事業者と直接長期購入契約を結ぶ形態で、支援廃止を機にさらなる市場拡大が見込まれます。
弁護士としては、コーポレートPPAの契約実務における以下の論点への対応が必要と考えます。
第1に、長期購入価格の設定と価格変動条項の設計。20年前後の長期契約における市場価格変動リスクをどう配分するか。
第2に、需要家側の途中解約リスクへの対応。企業の事業再編・買収等に伴う契約承継・解約の条項設計。
第3に、託送料金や再エネ賦課金の変動リスクへの対応。オフサイトPPAにおいては特に重要となります。
第4に、追加性(Additionality)要件を求めるRE100加盟企業等の需要家向けの証憑設計。
農地転用許可基準の再構成の実務インパクト
高村委員が提言する農地転用許可基準の再構成が実現した場合、営農型太陽光の事業スキーム設計に大きな変化が生じます。
現行の一時転用許可の運用では、営農の継続性、収穫量の維持、遮光率等の定量基準が中心となっています。
これに「地域便益」を組み入れる新基準が導入された場合、以下のような評価軸の追加が想定されます。
①荒廃農地の復活実績(転用対象地が耕作放棄地であったか等)。
②新規就農者の雇用状況。
③地域住民への災害時電力供給機能の有無。
④地域内での農産物流通・加工との連携。
⑤地域新電力への売電・地元需要家へのPPA供給。
弁護士としては、営農型案件のDD項目に、これらの地域便益の証憑(雇用契約、業務委託契約、地域協定、災害時運用マニュアル等)を追加する準備が必要と考えます。
また、農地転用許可の許可条件に地域便益維持義務が付される可能性があり、この義務違反時の許可取消リスクをPPA・プロジェクトファイナンスにどう反映するかも実務論点となると考えられます。
災害時電力供給義務が認定要件化した場合の契約実務
REASPが支援対象として提案し、原田委員が実効性確保を条件に賛成した「災害時電力供給機能」が認定要件化された場合、以下の契約実務対応が必要となると考えます。
第1に、自治体との運用協定の締結です。箕輪町とPPA事業者の間で締結された、避難所へのEV派遣運用協定のような具体的な取り決めが必要となります。
協定書には、災害時の連絡体制、電力供給の対象施設、供給時間・供給量の目安、供給に伴う費用負担、供給義務の免責事由等を明記する必要があると考えます。
第2に、平時からのメンテナンス義務です。自立運転機能、V2Xシステム、蓄電池等の非常時設備は、平時から動作確認とメンテナンスが行われていなければ災害時に機能しません。
O&M契約に、非常時設備の点検頻度、機能確認手順、記録保存義務等を明記する必要があります。
第3に、地域防災計画との連携義務です。原田委員が指摘するように、地域防災計画に自社発電設備の位置づけ・活用方法を書き込み、防災訓練への参加、住民への周知等の連携活動が求められる可能性があります。
第4に、免責条項の設計です。災害時電力供給は事業者にとって新たな義務となるため、供給不能となった場合の損害賠償責任範囲、不可抗力免責の要件を明確化する必要があります。
過度に広い免責を設定すると認定要件を満たさないと評価されるリスクがあり、狭すぎる免責は事業者側のリスクが過大となるため、バランスの取れた条項設計が求められます。
2032年問題への備え
REASPが「2032年問題」として提起し、原田委員が金融機関としての関与意向を示した卒FIT/FIP後の事業継続論は、既存案件を持つ全ての事業者にとって避けて通れない論点です。
2012年7月のFIT制度開始から20年目にあたる2032年以降、初期のFIT認定案件が調達期間終了を迎えるため、以下のスキーム再設計が必要となります。
第1に、卒FIT後のPPA組成です。調達期間終了後の売電先を確保するため、コーポレートPPA、地域新電力への卸供給、卸電力市場(JEPX)への直接販売等の選択肢を、遅くとも調達期間終了の3〜5年前から準備する必要があると考えます。
第2に、蓄電池併設・アグリゲーション参画です。卒FIT電源の価値を高めるため、蓄電池を併設して市場価格の高い時間帯に売電する運用、またはアグリゲーターを介して調整力市場・需給調整市場に参画する運用が有力な選択肢となります。
第3に、リパワリング・リプレイスです。資料5(浜松市)でも「卒FIT電源のリパワリング・リプレイス」が今後の施策として明記されており、パネル・パワコンの更新による発電量回復、および最新機器への置き換えによる収益改善が想定されます。
第4に、再ファイナンスです。プロジェクトファイナンスの返済が完了した資産について、新たな事業スキームに応じたリファイナンスを組成する需要が発生します。
これらのスキーム再設計には、いずれも契約実務上の対応が必要であり、事業者側での早期の準備が不可欠と考えます。
認定基準の予見可能性と行政訴訟リスク
「地域共生」概念を認定基準に組み込むにあたっては、認定審査の予見可能性の確保が重要な論点となります。
認定基準が抽象的な文言(「地域と共生していること」等)にとどまると、認定審査の裁量が過大となり、事業者側の予見可能性が損なわれるだけでなく、認定拒否や認定取消しに対する行政訴訟リスクも高まると考えられます。
したがって、認定基準は可能な限り外形的・客観的な指標(協定締結の有無、区域指定の有無、証憑書類の有無等)に置き換えて設計されることが望ましく、事業者団体や実務家からのパブリックコメント段階での意見表明が重要と考えます。
支援水準・支援期間の見直しと減価償却・ファイナンスの整合性
支援価格・期間の見直しは、事業計画のIRR、減価償却スケジュール、プロジェクトファイナンスの返済スケジュールの全てに影響します。
初期投資支援スキームが適用される場合、初期費用の一部が別途補助される代わりに調達価格が抑制される構造となるため、キャッシュフロー計画の全面的な組み替えが必要となります。
弁護士としては、支援制度の詳細が確定した段階で、既存の事業計画書・ファイナンス契約書のストレステストを行い、改定条件下での事業成立性を再確認する作業が必須と考えます。
地域共生要件と競争法・独占禁止法との関係
地域共生要件の中で、地域新電力への卸供給、地元事業者への発注優先、地元金融機関からの調達優先等が事実上の要件化される場合、競争法・独占禁止法との関係にも留意が必要と考えます。
特に、自治体が特定の地域新電力への卸供給を認定要件として求める場合、当該地域新電力が実質的に独占的地位を得る可能性があり、公正な競争の観点からの整理が必要となる可能性があります。
また、地元優先発注が、外部事業者に対する不当な取引拒絶や差別的取扱いに該当しないよう、要件設計の合理性と透明性を確保する必要があると考えます。
都道府県・市町村レベルの条例規制との重層的規律
事業用太陽光をめぐっては、既に多くの都道府県・市町村が独自の条例やガイドラインを制定しており、国レベルの認定基準との重層的な規律が形成されています。
浜松市の「適正な再生可能エネルギーの導入等の促進に関する条例」(2020年)はその代表例と考えられます。
支援重点化により地域共生要件が国レベルの認定基準に組み込まれる場合、自治体条例との整合性・重複回避の整理が求められます。
事業者側としては、案件立地自治体の条例内容を早期に確認し、国レベルの認定基準と併せて充足要件を整理するデュアルチェックの体制が必要と考えます。
次回小委員会に向けて – 想定される議論の方向性
類型の「絞り込み」フェーズへ
第3回小委員会は事業者・自治体ヒアリングの位置づけであり、次回以降、事務局と委員による類型の絞り込みと制度的論点の具体設計フェーズに入ると考えられます。
今回のヒアリングで挙げられた候補類型のうち、事業者団体・自治体・金融機関の三者が合意しやすい類型は、「屋根設置」「促進区域内事業」「営農型」「ソーラーカーポート」「公有地・インフラ空間」の5類型と考えられます。
これらが中核となり、その他の類型(未利用地再活用、水上太陽光、BIPV等)は補足的位置づけとなる可能性が高いと思われます。
認定基準の客観性担保と地域共生要件の実効性確保のバランス
最大の難所は、認定基準の客観性・予見可能性と、地域共生要件の実効性確保のバランスをどう取るかです。
認定基準を外形的指標中心にすると予見可能性は高まりますが、形式的な要件充足に留まる懸念が生じます。
一方で実質判断を重視すると認定審査の裁量が拡大し、事業者側の予見可能性が損なわれるおそれがあります。
両者のバランスをどう取るかが、次回以降の議論の焦点になると考えます。
事業者側で今から着手すべき事項
弁護士としては、事業者側が今から着手すべき事項として以下の6点を整理します。
第1に、既認定案件の棚卸しと、経過措置適用が問題となり得る案件のリストアップ。
第2に、新規案件のパイプラインを、支援重点化後の類型に整合するよう再構成すること。
第3に、コーポレートPPA市場への参入準備、および既存の売電スキームの見直し。
第4に、営農型案件を保有・計画している場合、地域便益の証憑準備(雇用契約、地域協定、災害時運用マニュアル等)。
第5に、卒FIT/FIP後のスキーム設計(PPA・アグリゲーション参画・リパワリング)の検討。
第6に、社内法務・契約書テンプレートの見直しと、認定要件変更に対応した表明保証条項・リスク配分条項の整備。
これらの準備は、いずれも制度確定を待ってから着手するのでは遅く、次回小委員会以降の議論を注視しつつ並行して進めることが望ましいと考えます。
まとめ
第3回再生可能エネルギー主力電源化小委員会で議論された「事業用太陽光発電におけるFIT/FIP制度の支援重点化」は、単なる調達価格の見直しではなく、FIT/FIP制度の対象範囲そのものの再定義であり、事業用太陽光を「量」から「質」へと大転換させる政策転換であると考えられます。
2027年度以降の地上設置太陽光へのFIT/FIP支援は廃止を含めて検討され、支援は屋根設置・促進区域・営農型・ソーラーカーポート・公有地インフラ空間等の「地域共生型」に絞り込まれる方向で、業界団体・自治体・委員の間で概ねの方向性は共有されつつあると考えられます。
一方で、認定基準の客観性の担保、地域共生要件の実効性確保、既認定案件の経過措置、2032年問題への対応、農地転用許可基準の再構成、災害時電力供給義務の契約実務対応、認定基準と自治体条例との整合性等、実務家として整理すべき論点は多岐にわたります。
事業者・投資家・自治体・地域住民のそれぞれの立場から、次回以降の議論の行方を注視し、必要な準備を並行して進めることが求められる局面と考えます。
弁護士としても、既存案件のスキーム見直し、新規案件のDD項目再設計、契約書テンプレートの改訂、事業譲渡・M&A案件におけるリスク配分条項の見直し等、対応すべき実務課題が数多く控えていると認識しています。
読者の皆様におかれましても、自社の再エネ関連案件について、今回の議論を機に一度棚卸しをされることをお勧めしたいと考えます。
当事務所では、再生可能エネルギー事業に関する制度改正の分析から、案件スキームの設計、PPA・EPC・O&M契約や事業譲渡におけるリスク配分、認定・許認可対応、デューデリジェンスまで、実務に即したサポートを行っています。
FIT/FIP制度の支援重点化を見据えた既存案件の点検や、新規案件の類型設計・契約設計について、ぜひお気軽にご相談ください。
