[コラム] 営農型太陽光は農地の一時転用から市町村の認定へ – 2026年10月の省令改正と告示を契約実務から読む

✅ ざっくり言うと

  • 🌾 2026年10月9日、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関する省令2本と告示1本が官報で公布され、農地法施行規則の改正は2027年4月1日に施行されます。
  • 🏛️ 施行後は、農山漁村再エネ法に基づく設備整備計画について、市町村の認定の見込みがあることが、農地の一時転用許可の前提になります。
  • 📏 遮光率30%未満、最低地上高おおむね3m以上、営農者の販売実績年間50万円以上などの基準が、国の基本方針に定められました。
  • 📝 発電事業者、営農者及び地権者の間の契約では、利益還元、撤去費用、収量の確保、営農者の交代を、これまで以上に具体的に定めておく必要があると考えています。
目次

はじめに

今回は、2026年10月に公布された営農型太陽光発電の制度改正について、発電事業者と営農者の契約にどのような影響があるのかという観点から説明していきます。

営農型太陽光発電は、農地に支柱を立てて上部に太陽光パネルを設置し、下の農地で営農を続けながら発電する取組です。
これまでは、農地法に基づく一時転用許可を中心に運用されてきました。
今回の改正では、市町村が作成する計画と、市町村による認定が手続の中心に置かれることになります。

制度の名前が長く、省令と告示が複数にまたがるため、何が変わったのかが分かりにくいと感じている方も多いのではないかと思います。
本稿では、官報、改正後の基本方針及び農林水産省の資料を基に、変更点を整理したうえで、契約で見直したい点を挙げます。

改正の全体像

2026年10月9日の官報(号外第223号)には、営農型太陽光発電に関する次の3つの改正が掲載されています。

  • 農地法施行規則及び農山漁村再エネ法施行規則の一部を改正する省令(農林水産省令第72号)
  • 農山漁村再エネ法に基づく設備整備計画の認定等に関する省令の一部を改正する省令(農林水産省・環境省令第8号)
  • 農山漁村再エネ法に基づく基本方針の一部を改正する件(農林水産省・経済産業省・環境省告示第5号)

農山漁村再エネ法とは、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律のことです。
市町村が再生可能エネルギーの導入に関する基本計画を作り、事業者が作る設備整備計画を市町村が認定する仕組みを定めています。

施行日は改正ごとに異なります。
農林水産省令第72号の附則によると、農地法施行規則の改正は2027年4月1日に施行され、農山漁村再エネ法施行規則の改正は公布の日から施行されています。
設備整備計画の認定等に関する省令の改正も、附則により公布の日から施行されています。

手続の中心は市町村の認定に移る

農林水産省令第72号による改正後の農地法施行規則第47条第6号は、申請に係る事業が営農型太陽光発電である場合に、農山漁村再エネ法第7条第1項の設備整備計画について、同条第3項の認定の見込みがないことを、一時転用の不許可の事由としています。
権利の設定又は移転を伴う場合の第57条第6号も、同じ趣旨の規定です。
なお、第47条第6号は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体実行計画を策定した市町村の区域内では、同法の地域脱炭素化促進事業計画の認定の見込みについても定めています。

これにより、施行後に営農型太陽光発電を始めるには、次の流れを経ることが前提になると考えられます。

  1. 国が農山漁村再エネ法に基づく基本方針を定める
  2. 市町村が基本計画を作成し、営農型太陽光発電設備を位置付ける
  3. 発電事業者などの設備整備者が設備整備計画を作成し、市町村に認定を申請する
  4. 市町村の認定を受け、農地の一時転用の手続を進める
  5. 毎年、実施状況を市町村長に報告する

この流れは、2026年4月に開催された農林水産省の望ましい営農型太陽光発電に関する検討会(第6回)の資料でも、新たな制度の手続の案として示されていました。

一方、改正前の農地法施行規則に定められていた単収、日照、設備の高さなどの不許可の事由(改正前の第47条第6号)と、営農型太陽光発電の申請書類に関する規定(改正前の第30条第2項)は、削除又は改正されています。
単収などの基準は国の基本方針に、申請書類は設備整備計画の認定等に関する省令に移されました。

実務上は、事業地の市町村が基本計画を作成しているかどうか、営農型太陽光発電設備をどう位置付けているかが、最初の確認事項になると考えています。
基本計画がない市町村では、計画の作成を待つ必要が生じる可能性があります。

基本方針に定められた基準

改正後の基本方針(農林水産省掲載の令和8年10月9日付け施行版)は、営農型太陽光発電の基本理念と、それを実現するための設備の形状及び実施の形態を定めています。
市町村は、営農型太陽光発電設備を基本計画に位置付ける場合、原則としてこれらを基本計画に明記するものとされています。

基本理念

基本理念の前提は、適切な営農の継続です。
下部の農地で栽培する農作物の単位面積当たりの収穫量(単収)が、同じ年産の市町村の平均的な単収と比べて、おおむね2割以上減少するおそれがないことが基本方針で求められています。
そのうえで、食料生産の基盤である農地の機能の維持、農業者の所得向上及び経営発展、地域との共生及び地域活性化の3つが掲げられています。

数値を含む基準

基本方針が定める主な基準は次のとおりです。
発電設備、営農及び地域との共生の3つに分けて整理します。

区分主な基準
発電設備遮光率が30%未満であること(遮光率での判定が困難な設備は、生育期間を通じてほ場の全ての地点で日射量の減少率が20%未満であること)、最低地上高がおおむね3m以上かつ農業機械の通路の幅がおおむね4m以上確保されるよう支柱が設置されていること、農作物の品質を著しく劣化させるおそれがないこと
営農地域計画の区域内では営農者が地域計画に農業を担う者として記載されていること、栽培に必要な労働力が確保されていること、年間50万円以上の生産・販売実績等を有していること、一般的な販路が確立した品目であること、原則として初年度から毎年収穫できる品目であること
地域との共生協議会での協議が調っていること、発電事業者から営農者(地権者が異なる場合は地権者を含む)に対して合意の上で適正な利益還元が行われること、第三者への損害に対する補償の方針が明確であること、土地改良事業などの妨げにならないこと、撤去費用の確保が確実であること

注目したいのは、一般的な販路の考え方です。
基本方針は、一般的に市場価値が認められないものを発電事業者などが買い取る場合は、一般的な販路に含まれないとしています。
発電事業者が作物を買い取ることで営農の形を整えるような仕組みは、認められないと考えられます。

また、基本方針は、これまでの実証研究などによると、米、麦及び大豆は、上記の遮光環境の下でも適切な栽培管理を前提に単収を確保できるとしています。

市町村による特例

基本方針は、複数年の試験栽培の結果などから公的機関、大学又はそれらの研究機関が得た科学的根拠に基づき、基本理念の実現が確保される場合には、国及び都道府県の助言を受けて、市町村が設備の形状及び実施の形態について特例的な対応を定めることができるとしています。
都道府県の機関と試験的な栽培を行う場合も同様です。
ただし、地域との共生に関する基準は、特例の対象から除かれています。

遮光率などの数値基準には特例の余地がある一方、利益還元、補償の方針及び撤去費用の確保は、どの地域でも外せない要件として位置付けられていると考えられます。

申請書類と毎年の報告

改正後の設備整備計画の認定等に関する省令は、営農型太陽光発電の場合の添付書類として、次のものを定めています。

  • 営農型太陽光発電設備その他必要な設備の設計図
  • 単収の見込みの根拠となる書類(市町村の区域内の生産量などのデータ、又は先行する栽培実績)
  • 設備整備者が設備の撤去費用を負担することの誓約書
  • 毎年、認定設備整備計画の実施状況の報告書を市町村長に提出することの誓約書

官報に掲載された様式によると、撤去費用の誓約書は、全ての設備整備者及び下部の農地の営農者を申請者として記載するものとされ、事業の終了時又は廃止時に撤去費用を負担することを誓約する内容になっています。
実施状況の報告は、翌年2月末までに行うことを誓約する様式です。

撤去費用の誓約書に営農者も名を連ねる様式になっている点は、契約上の手当てと深く関係します。
この点は、後で詳しく触れます。

既存の案件には当分の間改正前の規定が残る

既に一時転用許可を受けて営農型太陽光発電を行っている案件については、経過措置があります。

農林水産省令第72号の附則第2条第1項は、施行前にされた許可の申請で、施行の際に処分がされていないものは、なお従前の例によるとしています。
同条第2項は、施行前に許可を受けている者が、施行後に同一の事業の実施のために許可を受けようとする場合には、当分の間、改正前の農地法施行規則第30条第2項、第47条第2号の2及び第6号、第57条第2号の2及び第6号並びに第57条の4第2項第5号の規定が、なお効力を有するとしています。

つまり、既存の案件の再許可には、当面は改正前の規定が適用されます。

もっとも、前述の検討会の資料では、既存の事業者についても厳格に対応する方針が示されていました。
具体的には、国が都道府県と一体となって審査及び現地調査を行う対象を下部の農地面積4haから2haに引き下げること、勧告及び命令の判断基準を明確化すること、勧告を受けて改善が見られない者による再許可の申請を不許可とする運用を明確化することなどです。
これらは案の段階の資料ですが、経過措置があるからといって再許可が当然に得られるわけではないと考えておく必要があります。

農林水産省の検討会の資料によると、営農型太陽光発電設備を設置するための一時転用許可は、2023年度までに6,137件、下部の農地面積は1,361.6haに達しています。
また、同じ資料では、2023年度末の時点で、下部の農地での営農に支障があったものは24%(1,221件)とされています。
数字の上でも、既存の案件の中に基準を満たさないものが一定の割合で含まれていることがうかがえます。

なお、一時転用の期間は、農林水産省の営農型太陽光発電に係る農地転用許可制度上の取扱いに関するガイドラインの別表で、担い手が自ら所有する農地などを利用する場合、遊休農地を再生利用する場合、及び第2種農地又は第3種農地を利用する場合は10年以内、それ以外の場合は3年以内とされています。
発電事業の期間に比べて許可の期間が短いため、再許可の見込みは、事業の価値を大きく左右します。

契約で見直したいこと

ここまでの改正内容を踏まえて、発電事業者、営農者及び地権者の間の契約で見直したい点を挙げます。
再生可能エネルギー事業の契約の観点から、制度の要件と契約の条項がずれやすい点を整理します。

利益還元の条項

基本方針は、発電事業者から営農者(地権者が異なる場合は地権者を含む)に対し、合意の上で適正な利益還元が行われることを求めています。
また、協議会の協議事項の例として、営農者等への利益還元の状況が挙げられています。

契約では、還元の算定方法(売電収入に連動させるか、定額にするか)、支払時期、発電量が減った場合の扱いを具体的に定めておくことが考えられます。
市町村への報告で利益還元の状況を説明できるよう、算定の根拠となる資料を共有する義務も定めておくと実務が回りやすいと思われます。

撤去費用の負担

前述のとおり、撤去費用の誓約書は、設備整備者だけでなく営農者も申請者として記載する様式になっています。
営農者から見ると、行政に対しては撤去費用を負担する側に名を連ねることになります。

発電事業者と営農者の間では、撤去費用を最終的に誰が負担するのか、積立金又は保証によってどう確保するのか、発電事業者が倒産した場合にどうするのかを、契約で明確にしておく必要があると考えています。
特に、営農者が撤去費用を負担しない前提であれば、発電事業者による求償の受入れ又は積立金からの支払など、営農者を保護する仕組みを置くことが考えられます。

収量と営農の継続

基本方針の基準では、単収が地域の平均よりおおむね2割以上減少するおそれがないことが求められています。
収量が基準を下回った場合に、誰が、いつまでに、どのような改善措置をとるのか、改善が見られない場合に契約をどう扱うのかを定めておくことが重要です。

発電事業者の側から見ると、営農者の営農の状況が、許可の維持及び再許可の見込みに直結します。
栽培計画の共有、収量の報告、現地確認の権利などを契約に盛り込むことが考えられます。

営農者の交代

施行後は、地域計画の区域内であれば、営農者が地域計画に農業を担う者として記載されていることが求められます。
営農者の高齢化、廃業又は死亡によって営農者が替わる場合、新しい営農者が要件を満たすかどうかが問題になります。

契約では、営農者が営農を続けられなくなった場合の通知義務、後任の営農者の選定方法と発電事業者の関与、後任が見つからない場合の扱いを定めておくことが考えられます。

土地の利用期間

土地の賃貸借又は地上権の期間と、一時転用許可の期間及び設備整備計画の認定の期間がずれていると、許可又は認定が更新されなかった場合に、土地の権利だけが残る事態が起こり得ます。
許可又は認定が得られなかった場合の解除の条件と、その場合の撤去及び原状回復の負担を、土地の契約にも明記しておく必要があると考えています。

既存の営農型案件を取得するときの確認事項

既に稼働している営農型太陽光発電所を取得する場合には、通常の太陽光発電所の取得に加えて、次の点を確認しておきたいところです。

  • 一時転用許可の期間と、これまでの再許可の経過
  • 毎年の栽培実績及び収支の報告が適切に提出されているか
  • 下部の農地の収量が、地域の平均と比べてどの程度か
  • 指導又は勧告を受けたことがあるか、受けた場合に改善されたか
  • 営農者が誰で、今後も営農を続けられる見込みがあるか
  • 設備の遮光率、高さ及び支柱の配置が、改正後の基準と比べてどの程度離れているか
  • 撤去費用の確保の方法と、営農者及び地権者との契約の内容

既存の案件は、当面は改正前の規定で再許可を受けられる余地があります。
しかし、営農の状況に問題がある案件は、再許可が得られないリスクを抱えています。
売主の表明保証、価格の調整及び再許可が得られなかった場合の補償を、売買契約でどう手当てするかが重要になると考えられます。

まとめ

2026年10月の改正により、営農型太陽光発電は、農地の一時転用許可を中心とした運用から、市町村の基本計画と設備整備計画の認定を前提とする仕組みに移ります。
遮光率、設備の高さ、営農者の要件、利益還元及び撤去費用の確保といった基準も、国の基本方針に明記されました。

既存の案件には当分の間改正前の規定が残りますが、国は不適切な案件に厳格に対応する方針を示しています。
新しく事業を計画する場合も、既存の案件を取得する場合も、制度の要件を契約の条項にどう落とし込むかが、事業の安定性を左右すると考えています。

営農型太陽光発電の契約についてのご相談

ボーダレス経営法律事務所は、再生可能エネルギー事業の開発、取得及び資金調達に関する契約を継続して取り扱っています。

営農型太陽光発電では、発電事業者、営農者及び地権者の3者の利害を、制度の要件に沿って契約に落とし込む必要があります。
新たな事業の契約の作成、既存の契約の見直し、発電所の取得時の確認など、事業の段階に応じてご相談をお受けしています。

ご相談は以下のお問い合わせフォームからお願いします。

※本稿は2026年10月23日時点で公表されている官報及び農林水産省の資料に基づく一般的な整理です。個別の案件における手続及び要件は、事業地の市町村、農業委員会及び関係機関に確認する必要があります。

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